【特集】親子2代でオリンピック挑戦へ…43kg級・藤川千晶(埼玉・埼玉栄)【2007年8月18日】







 全国高校女子選手権の43kg級を勝ち抜いたのは、埼玉・埼玉栄2年の藤川千晶
(右写真)。4月のジャパンビバレッジクイーンズカップ2007(東京・駒沢体育館)のカデット43kg級に続くビックタイトルを獲得し、「優勝できてうれしい」と率直に喜びを表現した。

 楽な勝利ではなかった。今大会にはシード制が採用されていないことから、初戦でいきなり強豪と激突。4月のJOC杯ジュニアオリンピック(カデット43kg級)の準決勝で敗れている鈴木美織(東京・安部学院)と対戦した。この試合にきん差でものにすると、続く準決勝の相手はJOC杯ジュニアオリンピックを制した長沼美香(岐阜・岐阜工)。

 試合は第1ピリオドを先制される厳しい展開となったが、ここを逆転で勝ち上がると、決勝も粘り強いレスリングで勝利。藤川は「課題にしていたスタンドの練習をずっとしてきて、今日はバックに回ったりタックルを決めたり、練習してきたことが試合で出せたと思う」と勝因を分析した。

 自衛隊でコーチを務める父・健治さん
(左下写真)の勧めで、4歳からレスリングに親しんだ。父の厳しい指導を受けながらも「辞めたいと思ったことはなかった」という。持ち前の明るさが幸いしたのだろう。レスラーの血を引く少女はマットの上ですくすくと成長した。

 埼玉栄高に進学すると高校生との練習に加え、同校が積極的に実施している自衛隊との合同練習も経験。自衛隊に在籍するあこがれの世界王者、坂本日登美(51kg級)にスパーリングの相手をしてもらい、「構えがしっかりしていてまったく崩れない。大きな技をしなくても一つ一つがしっかりしている」と多くを学んだ。

 「夢は」と問えば、やはり「オリンピック」と答えは返ってくる。父の健治さんは1980年代にフリースタイル52kg級で活躍し、五輪出場を目指したが、当時の同級は黄金時代。84年ロサンゼルス五輪は復帰してきた高田裕司(現日本協会専務理事)や佐藤満(現専大コーチ)に敗れ、88年ソウル五輪へ向けても佐藤満という五輪金メダリストの厚い壁があり、涙をのんでいる。

 父親のエピソードを知っている藤川は「お父さんの分までがんばりたい」と笑顔で決意表明。親子2代にわたる五輪挑戦を宣言した。

(文・撮影=渋谷淳)


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