【特集】強豪・吹田市民教室を撃破! 元世界女王が快挙…SUKOBURUゴールドキッズ【2007年8月13日】







 団体戦の11人以上の部で、2004年に2位、昨年3位だったSUKOBURUゴールドキッズ(東京=
右写真)が13階級で優勝を達成。団体戦メンバー10選手のうち9選手が優勝するというすばらしい内容で、初の栄冠を獲得した。

 50人近い選手をたった1人で指導している元女子世界チャンピオンの成国晶子代表(旧姓飯島、
左写真中央)は「子供たちが頑張った結果です。いい成績を残した時は子供たちが頑張ったから勝てた、ダメだった時は私がダメだったから負けた、が指導理念。今回は子供たちが本当によくやりました」と、キッズの指導の道に入って8年目の快挙に目も潤みがち。

 練習場は杉並区、目黒区、板橋区、太田区の4ヶ所に確保している。レスリングの裾野を広げるため、あえてあちこちに確保したそうだが、キャンバスが1面ずつあるわけではなく、1面を4分の1ずつに切ったものが各練習場に置いてある。従って場所は狭く、練習環境は決してよくない。こうした状況でも50人近くの部員が集まり、全国一のチームを育てることができたのも、ひとえに成国代表の熱意だろう。4ヶ所合わせれば週6〜7日にもなる練習すべてに参加する情熱が、チームを全国一育てたと言っても間違いではない。

 その練習のほか、強くなりたい選手をつれて週2回ほど東京・自由が丘学園高校のレスリング部にお世話になっている。「古里(光弘)先生、奥山(恵二)先生に本当にお世話になりました。これで恩返しができました」と、感謝の気持ちを表した。

■高い目標を持たせることが指導方針

 成国代表の指導方針は、高い目標を持たせること。選手には常にオリンピック出場を目標にやらせているという。そうした“洗脳”も勝負の世界には大切なこと。高い目標を持たせれば持たせるほど、選手は必死になって練習してくれるという。
(右写真=わが子の快挙を祝福する父。指導者は1人だが、保護者のサポートは十分)

 成長期の子供に、レスリングのような激しいスポーツを週5日も6日も練習させることが、将来にいいことか悪いことかは、時に論議されること。それに対しては、「やる気を持った時にやらせることは、決して間違ってはいない」と言う。だが、ぎゅうぎゅう詰めにすることもやらない。「優勝した選手の中には、週3日の練習という選手もいる。疲れたり、気持ちがどうしても乗らない時は、練習を休んでもいい。そうした判断が自分でできる人間に育ってほしい」と話す。

 さらに「ほめること。一緒に頑張っていこうと励ましていくこと」が指導の基本。「上級生が下級生の面倒を見る」というチームワークも大事にしており、「私が選手時代に納得してやってきたことをやっている。納得いかなかったことは、選手に押しつけない」とも。そうしたすべての信念の結集が、8年目の快挙達成だった。

■女子世界チャンピオンの新たな挑戦

 成国代表は、1985年にスタートした日本の女子レスリングの第1期生世代。すなわち、本格的な選手経験のある数少ない女性指導者だ。これまで男の指導者が圧倒的に多かったキッズレスリング。もしかしたら、キッズの指導は選手経験のある女性指導者の方が向いているのかもしれない。

 そんなことを感じさせてくれたゴールドキッズの躍進だが、成国代表は「いえ、これからもっと上の選手をつくります。男子選手は、男性の指導者に任せることになると思うけど、女子の世界チャンピオン、オリンピック・チャンピオンを育てたい」と言う。女子レスリングの初期を支えた世界チャンピオンの全国一到達は、新たな挑戦のスタートラインだ。
(左写真=クラブのTシャツの背中には、「長く苦しい練習は ほんの一瞬の 感動のために あるんだ」のクラブ訓)

(文・撮影=樋口郁夫)



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