【特集】“王者”霞ヶ浦を破っての2連覇達成! 実った秋田商・鈴木イズム【2007年8月4日】






 昨年、33年ぶりのインターハイ団体優勝を遂げた秋田商(秋田)が、今年3月の全国高校選抜大会の覇者の霞ヶ浦(茨城)を決勝で破って2連覇を達成した。

 インターハイで連覇を達成したのは、1958・59年の東京実(東京)、76・77年の足利工大付(栃木)、80・81年の土浦日大(茨城)、82〜85年に4連覇した光星学院(青森)、不滅の金字塔を継続する霞ヶ浦(86〜89年=3連覇、90〜2000年=11連覇、02〜05年=4連覇)に次いで、のべ8校目。霞ヶ浦が86年に天下を取って以来、同校の優勝にストップをかけたのは秋田商で3校目となるが、初めて2連覇達成高校となった。

■“強い霞ヶ浦”を破ってのインターハイ優勝

 会場のスペースの関係で応援席はマットサイドにつくられており、チームと保護者が一体となって応援し、喜びに沸くことのできる大会。応援団の歓喜に送られてマットに上がり、選手からの胴上げを受けたあと
(右写真)、鈴木信行監督は「団体戦の連覇って、大変なことだと思います。霞ヶ浦が勝ち始めてから、連覇した高校ってないでしょ」と勝利の第一声。連覇が難しいという過去の記録をしっかりと把握していた。

 それとともにうれしいのは、「霞ヶ浦を破っての優勝」だということ。昨年は春夏連覇を達成したとはいえ、ともに霞ヶ浦との対戦はなかった。「(自身が監督になって)初めてのインターハイ優勝であり、学校初の春夏連覇で、その喜びは何もにも代えがたいものがあった。でも、周りの評価は『強い霞ヶ浦を破ってこそ本当の優勝だ』でした。今年の霞ヶ浦は本当に強かった。その霞ヶ浦を破っての優勝は、本当にうれしいです」。

 3月の全国高校選抜大会の決勝でも顔を合わせた両者。その時は、秋田商が50、55kg級を落とし、66kg級までで1勝3敗とリードされる苦しい展開。しかし、その後の2階級を勝って3−3とし、120kg級の勝負で負けた展開だった。

■最高に“難産”だった勝負の84kg級

 今回も50kg級でレギュラー選手が体重が落ちずに棄権。秋田商にとって苦しい展開が予想された。しかし、50kg級黒星のあと、55kg級で個人戦の県代表の利部裕ではなく2年生の五十嵐琢磨の起用が当たり
(左写真=鈴木監督と五十嵐選手)、1勝1敗として序盤の苦境を脱した。鈴木監督が「勝負の分岐点」と評した55kg級を取ったことで、勝利の目が出てきた。66kg級までで2−2だが、選抜大会では74、84kg級で勝っているだけに、秋田商が有利というのは明白だ。

 案の定、74kg級で桑原一直がフォール勝ちして王手。続く84kg級も、佐藤良樹が第1ピリオドを2−0で取り、第2ピリオドも3−1で終盤へ。誰もが秋田商の優勝と思われた中、霞ヶ浦の和田知也がラスト5秒でがぶり返しを決めて3−3へ。秋田商の優勝にストップがかかった。

 やはり春の王者・霞ヶ浦、あっさりとは負けてくれない。しかし第3ピリオド、佐藤は落ち込むことなく闘い、3−1で勝利。第2ピリオドとことがあるだけに、最後の1秒まで気をゆるめずに声援を送っていた応援団席は、「今度こそ」といった表情で歓喜に沸きかえった
(右写真=中央こちら向きが鈴木監督))

■日程の不利をもはね返す優勝!

 秋田商に不利な材料があった。初日、台風の影響で2回戦の途中で試合が中断。霞ヶ浦が2回戦をこなしていたのに対し、秋田商は試合をしておらず、2日目に2回戦から決勝までの5試合をこなす日程となってしまったことだ。

 「正直、嫌な気持ちでした。どうせ延期するなら、2回戦のすべての試合を延期してくれれば条件は同じなのに、と思いました」と鈴木監督。しかし「決まったことは仕方ない」と割り切り、この不利に挑んだ。苦しい思いをすればするほど、勝った時の喜びは大きくなる。ハンディをも跳ね返しての打倒霞ヶ浦を果たしての優勝は、二重三重の喜びであることは間違いない。

 そんな鈴木監督を支える横山秀和コーチは、「1日5試合闘ってくれた選手が頑張ってくれた。感謝したい。日ごろから苦しい場面を想定して練習してきた成果が出たと思います」と話す。全国高校選抜大会は「霞ヶ浦は強い、というイメージに惑わされていた面があった」と言うが、「実際に強かった。団体戦で勝って、個人戦でも勝ちにいく選手ばかり。ウチの選手はその気持ちが足りなかった。以来、精神面を鍛えてきました」と振り返った
(左写真:激戦の選手をねぎらう鈴木監督と横山コーチ=左端)

 練習方針は「基本の反復」と言う鈴木監督。他に「ルールの中で勝つ練習も必要だけれど、ルールを取り払った本来のレスリングの強さを身につけることが大切。そうでなければ、大学、社会人になって伸びないと思っています」と強調する。鈴木イズムに育てられた選手、育てられる選手の今後の活躍が期待される。

(文・撮影=樋口郁夫)


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