【特集】男子全日本チーム、菅平合宿を追う【2007年7月18日】







 7月11日から男子全日本チーム恒例の長野・菅平合宿が実施されている。1978年に高地メキシコで行われた世界選手権に際し、高地対策として標高1300メートルの菅平を選んだことに始まり、以後、30年近くにわたって断続的に実施されている。

 夜は長袖が欠かせない涼しさだが、空気は平地より薄いため、レスリングのように心拍数が時に200(1分間あたりの脈拍数)近く達する激しいスポーツではきつさが倍増する。しかし、高地の米国コロラドスプリングズで猛特訓を積んだ女子マラソンの高橋尚子選手がシドニー五輪であっさり金メダルを取ったことで、高地トレーニングの必要性は実証済み。「練習よりずっと楽でした」とは走り終えた後の高橋選手の言葉。

 わずか1週間の合宿だが、ここでしっかりと体力を養った選手たちは、平地での練習はこれまで以上の質の高い練習を繰り広げることだろう。そんな全日本チームの練習を追った。


■マットワーク
 全日本のトップ選手を中心に総勢50選手近くがが集まった合宿。時に代表選手同士、あるいは全日本の1位選手と2位選手のスパーリングが行われ、緊迫した空気がただよう。
「世界3位より強い男」フリー60kg級・湯元健一の気合の入った練習。「3位より上に行く」と宣言! ALSOK綜合警備保障の同期の小幡邦彦(右)と松永共広。無念の代表落ちの小幡だが、元気に参加。 最近しいたげられている重量級の復権を目指す小平清貴(上)と田中章仁は壮絶なガチンコスパーリング。

■日本代表チームと報道陣の懇親バーベキュー大会
 16日は報道陣への公開練習。終了後、野外で日本代表選手・コーチと報道陣の懇親バーベキュー大会が行われた。これまでコーチと記者の懇親会は時たま行われてきたが、「マスコミも戦力」との信念を持つ富山英明強化委員長の発案で、日本代表選手と記者の懇親会が実現した。
 「多くの応援が集まれば、それは選手にとって大きな力になる。そのためには、マスコミの皆さんの力が必要」と富山委員長。マスコミの取材大歓迎は、日本レスリングの変わらぬ伝統だ。
宿舎の菅平プリンスホテルの大久保寿広社長(右端)のご厚意で実現したBBQパーティー。 合宿中は禁酒だが、この夜だけは解禁。豪華な肉や海鮮料理に、疲れも吹っ飛ぶ。 各選手が報道陣に世界選手権の抱負を披露。全員が「五輪代表を一気に決める!」と宣言。 環太平洋大学に赴任した嘉戸洋コーチが参加。世界選手権へ向け大きな力が帰ってきた。

■朝練習
 体力づくりは自然の中で行われる。宿舎の前にある崖を登ると、一面の草原が広がっており(菅平ダボス)、格好の練習場になる。1周約1kmのダッシュを4周に始まり、自然と人間を相手にしたトレーニングが行われる。
kmダッシュのスタートを待つ選手たち。みんないい肉体美をしている。
“ランニングの王者”は日体大の富岡直希選手。ランニングでは常にトップを走るという。 2人1組の補強トレーニング。この頃になると選手の顔にも疲労の色が濃く浮かんでいる。 最後の腹筋などのトレーニング。苦しいメニューが2時間近くに渡って行われた。
■特別メニュー(馬追い)
 17日は菅平合宿名物の馬追いが3年ぶりに行われた。体重500kg近い馬が猛スピードで走ってくると、かなりの迫力であり、圧力(空圧?)であり、脅威になる。どの選手も、体当たりされてはたまらんとばかり、必死の形相でダッシュを繰り返した。瞬発力の養成に最高の練習 !?
2頭の馬が背後から疾走してくる! 必死で逃げる選手たち。
普通の100メートル走より、絶対に瞬発力がつく!(左端に転んだ選手あり) 練習の最後に、馬に乗った富山委員長を中心に世界選手権での勝利を願う。 八田イズムの伝統「ライオンとにらめっこ」ならぬ、「馬とにらめっこ」の選手たち。

■特別メニュー(根子岳登山)
 菅平合宿のもうひとつの名物は、標高2300メートルの根子岳登山(宿舎は標高1300メートル)。石だらけの登山道は、ところによって急斜面もあり、普通の人が歩いて登っても1時間30分〜2時間。その距離を“ランニング王”富岡直希選手は1時間もかからずに登った。
 今年3月のフリースタイルのブルガリア合宿でも、近くの山への往復が練習メニューに加えられていたとのこと。韓国のナショナルチームの常設合宿・テヌン村でも、時に山登りの練習がある。体力づくりに欠かせない練習メニューのようだ。
頂上は一面のモヤで、気温は5度くらい? しかし上半身裸の選手も。(左端は本HPの増渕由気子記者) 体の大きな選手にとっては厳しい練習。しかし、重量級復権を欠ける加藤賢三は必死の形相で登頂。 登り2位の谷岡泰幸選手(自衛隊)。どんな苦しい練習の時でも、明るさを見せる貴重な存在とのこと。 帰りも辛い道が続くが、全日本王者の菅太一(左)鈴木豊ともランニングで下った。


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