【特集】思わぬ苦戦がいい薬となるか…グレコローマン60kg級・笹本睦【2007年6月10日】







 昨年のドーハ・アジア大会の金メダリスト、笹本睦(ALSOK綜合警備保障)が7連覇を達成するとともに、2度の五輪を含めて8度目の世界大会出場を決めた。(写真上下:松本と闘う笹本)

 国内では“圧勝続き”のイメージが強い笹本だが、今回は苦戦を強いられた。決勝の相手は大学の後輩であり日ごろの練習相手でもある松本隆太郎(日体大)。お互い手の内を知っているだけにやりづらさは感じていたが、「大丈夫だろう」という気持ちがあった。

 これが油断につながった。第1ピリオド、グラウンドでローリングを決められて落としてしまう不覚。第2ピリオドは守って勝利したものの、自身のローリングも決まらず、今ひとつ“圧倒的な強さ”が出なかった。第3ピリオドでは松本の固い守備に手を焼きながら、最後の最後でローリングを決めた。

 「気を抜いていた」と反省する一方で、以前は大きな差があった松本がしっかり追いかけてきている事実も否めない。全日本選手権7連覇を含め国内無敵は偉業だが、まだ世界でのメダルは手にしていない。その原因の一つとして、国内に敵がいなかったこともあるだろう。ここで松本に苦戦したことは逆に良い弾みになるかもしれない。気持ちを引き締めることで、世界選手権での表彰台が近づいてくるはずだ。

 今大会は、俵返しは披露せず、グラウンドは常にローリングで攻めていった。「世界にいったら体も大きいので、ローリングをしていきたい」と世界選手権に向け、ローリングの精度を上げることが課題。

 3月後半には世界王者のいるアメリカへ遠征し、この階級のトップ選手を圧倒してきた。7月には世界2位の選手がいるグルジアで1ヶ月近くの合宿をこなして実力を磨く予定で、世界で勝つためのシナリオはできた。念願のメダル獲得に向け、世界選手権までの日々を有意義なものにしてほしい。

(文=神谷衣香、撮影=矢吹建夫)


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