【特集】活動停止処分の苦境を乗り越え、日体大が2年連続の栄冠【2007年5月19日】







 終わってみれば「予想通り」との声も聞こえてきそうな2007年東日本学生リーグ戦の日体大の優勝だが、優勝までの道のりは決して平坦ではなかった。

 第3日(17日)のAグループ7回戦で山梨学院大に競り負け、全勝の早大にリードを許す形となり、後がなくなった。迎えた最終日。安達巧監督は選手起用で手を打った。山梨学院大戦で伏兵に苦杯をなめた55kg級の富岡直希に代え、石山雄平を起用。この作戦がズバリ的中した。切り込み隊長に指名された3年生は期待にこたえて早大のポイントゲッター、藤元洋平を撃破。チームは波に乗り、勢いのあった早大を5−2で下した。

 決勝は昨年と同じで、ここ30年以上もライバル関係が続いている日大との対戦。最初に意地を見せたのは、早大戦でメンバーから外された富岡だった
(右写真)。「きのう失敗していたので、今日は絶対に失敗できなかった」。プレッシャーを感じながらマットに上がると、本調子とはいかなかったものの、冷静な試合運びで須藤輝に勝利。トップバッターとしての重責を見事に果たした。

 試合を決めたのは96s級に出場した松本篤史だ。2005年にアジア・カデット選手権で優勝し、今年はJOC杯ジュニア84s級で優勝するなど上り調子の2年生は、昨年高校のタイトルを総なめにした日大の大物ルーキー、永田裕城(京都・網野高卒)をまったく寄せつけずに圧勝。ベンチと客席が歓喜に包まれた。

 苦しかったのはマットの上だけではなかった。昨年11月、不祥事によって1カ月の活動間停止処分を受けた。逆風にさらされる中、「事件以降、選手たちの意識が高まった。キャプテンの斎川哲克
(左写真)をはじめ、4年生が普段の生活面からしっかりやっていこうとチームをまとめてくれた」(安達監督)。逆境をプラスに転じた精神力も大きな勝因だった。

 今大会を通じては、2年生の志土地翔大(66s級)、1年生の山名隆貴(74s級=奈良・添上高卒))ら下級生の活躍も忘れられない。「彼らの成長が一番の収穫です。(年間の)4冠? 毎年目標ですけど、今年はしっかり取りたいですね」。たくましく成長したチームに、安達監督は手ごたえを感じている様子だった。

(文=渋谷淳)


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