【特集】「レスリングを通じて人間形成を」…高体連専門部・中根和広新理事長【2007年3月31日】







 事務局長として全国高体連レスリング専門部を支えてきた中根和広・日本工大付東京工高教監督が、2007年度から理事長に昇格。競技力の向上を目指して、あるいは少子化の影響による競技人口の減少にストップをかけるべく張り切っている
(右写真:中野由明理事長=左=からバトンを受けた中根新理事長)

 中根理事長は、強化の一環として、国情によって中止になったベラルーシ遠征に代わり、モンゴルへの遠征を計画中。高校生の海外遠征は現在、古くから続いている米国遠征のほか、中国遠征、韓国遠征を実施しており、これが実現すれば年4回の遠征となる。

 競技人口の減少は、レスリングのみならず多くの競技に共通する悩み。レスリングもひと頃より競技人口は減っており、団体戦(7階級)を組むのに苦労している学校も少なくない。

 日本協会はこうした状況に対応するため、2005年の初めにポスター製作して各校へ配布するなど、選手集めに協力した。中根理事長は日本協会のこうした支援に感謝しつつ、「アテネ五輪で女子が活躍し、男子もメダルを取ってレスリングが世間に認知された。今こそ普及のチャンス」として、高体連としても選手集めに積極的に取り組む意思を見せた。

 それには、中学でレスリングをやっている選手を他の競技に進ませず、レスリングを続けさせるかが大きなポイント。中学生選手が「高校へ行ってもレスリングをやりたい」と思ってくれるような魅力のある高校レスリング界になる必要があるわけで、海外遠征もそのひとつだろう。

 また、公式ホームページをスタートさせ、高校レスリング界の活動を積極的にアピールすることも考えているという
(左写真:高校レスリング界の一大イベントの全国高校選抜大会)

 チビッ子あがりの選手が増えてきた場合、高校へ入学してからレスリングを始めようとする選手が少なくなるという弊害も考えられるが、中根理事長は「すぐには勝てなくても、3年生の夏までにある程度追いつくことはできる。しっかりした強化により、そんな選手を多く育成し、そうした選手の存在をアピールしていくことも必要」と訴える。

 高体連における女子の普及についても、積極的に取り組む予定だ。これまでは上野三郎副理事長(岩手・宮古商高教)が女子担当として活動しており、昨年春に実施した中国遠征に女子選手を入れた。今年5月の遠征にも女子選手を参加させることが決まっており、10年前の専門部では考えられない活動に取り組んできた。

 上野副理事長はこの3月で勇退するため、早急に後任を決め、専門部の女子の活動を活発にしていきたいという。ただ、インターハイや全国高校選抜大会に女子を入れるとなると、頭をかかえてしまうのが現状。高体連主催のインターハイでは出場選手数が限られており、女子を入れるとなると、当然男子の出場数を削らなければならない。「各校の監督からの反発は必至でしょう」と言う。

 昨年8月の全国高校女子選手権の出場選手数が93選手。出場しなかった選手を合わせても、全国での競技人口は120選手前後と推定される。これでは、簡単に「女子を採用しよう」とは言えないのも無理はあるまい。

 中根新理事長は「(全国高体連主催の)インターハイより、(日本協会主催の)全国高校選抜大会の方が可能性はあるでは?」と話し、日本協会と新潟県協会の決断を期待してもいるようでもある(注:どちらの大会も全国高体連と日本協会が主催に名を連ねているが、インターハイは全国高体連、全国高校選抜大会は日本協会がメーンの主催になっている)。

 最後に「最も大切なことは、レスリングを通じて人間形成をすること」と話し、マットの上での勝負だけでなく、会場内でのマナー遵守を訴えた。何度放送して注意を喚起しても、ゴミを散らかす選手や、それを注意しない監督やコーチがいるのも事実。今大会でも、大会役員が「立ち入り禁止の貼り紙をしても、無視して入る選手がいて困る」などと選手のマナーの悪さに頭をかかえていたのも事実だ。

 「人間としてのマナーを守れる高校レスリング界にしていきたい」。中根新理事長の手腕が期待される
(右写真:昨年4月のJOC杯ジュニアオリンピック=横浜文化体育館=試合終了後のゴミだらけの体育館フロア。今年の大会では改善されるか)



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