【特集】北京五輪が見えた2年半ぶりの国際大会…男子フリー60kg級・井上謙二2007年3月6日】







 故障箇所を完治させて1月に約1年半ぶりに戦列に戻ったフリースタイル60kg級のアテネ五輪銅メダリスト、井上謙二(自衛隊)が、アテネ五輪以来約2年半ぶりの国際大会を銅メダル獲得で飾った。「久しぶりの国際大会だったので、どこまでできるか不安だった。やっていくうちに間隔がつかめてきた」と、2年半の“ブランク”を埋めたことで成果のあった遠征になった。

 今回多用したのが、全日本選手権での山本“KID”徳郁(KILLER BEE)戦で見せたぶら下がりの一本背負い。湯元戦以外の3試合で計6度仕掛け、3ポイントを取ることはなかったが、半分は3度はポイントにつなげている
(右写真=3位決定戦でも仕掛けた一本背負い)。KIDのひじを“破壊”した技として井上の代名詞になりそうな技だが、「(世界ででも)アピールしておこうかと思って…」と苦笑い。

 “ケンジ・スペシャル”として確立しいくのかと思われたが、「これ以上使うと手の内を知られてしまうの、もうあまり使いません」と言う。「こういう技もあるんだぞ、と思わせれば、フェイントになりますから」と、デモンストレーションの意味合いが強かったようだ。

 3回戦では、1月末の全日本選手権決勝で負けた湯元健一(日体大)にリベンジする貴重な白星も挙げた
(左写真)。その時のスコアは0−4、0−4の完敗。差を縮めるどころか追い越したわけだが、「自分が攻めて取れたポイントがなかった」と、この点では笑顔はなし。「今後の課題です」と、快勝によるリベンジは次回に持ち越しとなった。

 ただ、全日本選手権の時にくらべれば「試合勘が戻っていることは感じる。今回4試合もできたことが大きい」と話し、6月の全日本選抜選手権、そしてその後の闘いへ向けて順調な調整具合を感じている。準決勝で敗れたことも含めていろんな課題ができたが、「課題が見つかった方が、真剣に練習に打ち込めます」と、つまずきをプラスに変えていくつもりだ。

 「(復帰してから)これまでは、体を戻す練習が中心だった。これからは、北京オリンピックで勝つための練習をしていきたい」。おぼろげながらしか見えていなかった北京五輪の目標が、はっきりと見えた2年半ぶりの国際大会だった。


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