【特集】宿敵にリベンジし、ライバルに連勝! 大きな収穫…男子フリー55kg級・松永共広2007年3月5日】







 田岡秀規(自衛隊)に日本代表の座を譲ってしまったため、約1年間、国際大会から離れていたフリースタイルの2005年世界選手権55kg級5位、松永共広(ALSOK綜合警備保障)が、3月3日に行われたヤシャ・ドク国際大会で優勝。しかも、05年3位決定戦で負けたナヤンバータル・バヤラー(モンゴル)にリベンジし、田岡に1月の全日本選手権決勝に続いて連勝という結果も残した。最高の形での国際舞台復帰だったといえる。

 バヤラー戦は得意のタックルでポイントを取ることができず、取ったポイントはスタンドの攻防で相手の片足が場外に出た1点と、一本背負いのコレクトホールド(通称移動ポイント)による1点の計2点のみ。逆にタックルを決められて1点を取られるなど
(右写真)、内容的には満足のいくものではなかった。

 しかし前回の対戦で負けている相手には、まず勝つことが大事。「ポイントを取られたことは悔しいし、今後の課題。しかし、内容はよくなくても、勝てたことが収穫」と、勝ったことで一歩前進できた試合。自信という勝つこと以外ではなかなか得ることのできない収穫があった。

 前回の対戦で感じたパワーの差は、今回もあった。「四つ組の時に押されていた。パワーの差はまだある」と言う。しかし、タックルで持ち上げられてマットにたたきつけられた前回のような屈辱的なシーンはなく、2ピリオド4分間で失ったポイントは1点のみ。パワーの差を補うだけの試合運びは間違いなくうまくなっている。

 何よりも「1点を取られたことが悔しい」という言葉に、上を目指す気持ちが表れている。強豪との試合においては、1点が勝敗を分ける。それを痛感しているからこそ、最小ポイントであっても失点には納得がいかない。国際舞台で1年間のブランクがあったが、気持ちの上でのすきは全くないようだ。

 それは、「ホッとしています。うれしい」と1年ぶりの国際大会優勝(前回は昨年3月のダン・コロフ国際大会)に口元がほころびながらも、すぐに「トルコの選手はそんなにレベルが高くないですからね」と、トルコ2選手の含めた4連勝では満足できないという言葉が出てくることでも分かる。

 この階級は、05年世界王者のディルショド・マンスロフ(ウズベキスタン)、06年世界王者のラドスラフ・ベリコフ・マリノフ(ブルガリア)を筆頭に、米国、キューバ、ロシア、ウクライナなど強豪がずらり。「10人くらいが拮抗(きっこう)している状態」と分析している。その中の誰が優勝してもおかしくないし、誰もが10位になる可能性もある。この優勝では満足してはならないことは十分に知っている。

 幸い、この後ブルガリアで行われる合宿では、昨年の世界王者マリノフと練習する機会がありそう。「この勢いを合宿に持っていきたい」と燃えている。練習であってもマリノフを上回っている感触を持つことができれば、世界王者に半歩近づくことになる。貴重な合宿になりそうだ。

 「今年の世界選手権で(3位以内に入って)一気にオリンピックの出場権を決めたい」。世界で負けた相手にリベンジし、国内のライバルにも連勝した“05年のエース”は、エースの座に戻るだけの実力を間違いなく取り戻した。そして、世界一への道をしっかりと歩み始めた
(左写真=金メダルを首からかけた松永)


《iモード=前ページへ戻る》

《前ページへ戻る》