【優勝選手特集】男子グレコローマン74kg級・菅太一2007年1月28日】







 男子グレコローマン74kg級は、危なげなく決勝に勝ち上がった2006年世界選手権代表の菅太一(警視庁)が決勝でディフェンディング・チャンピオンの岩崎裕樹(銀水荘)を破って3年ぶり4度目の優勝。マイクを向けられた新王者は「父の還暦祝いになった」と顔をほころばせた。

 2005年に世界選手権に出場し同年のこの大会も制した岩崎は、昨年2月にけがをして戦列を離れ、1シーズンを棒に振った。しかし予想を上回る復調ぶり。2回戦で2004年覇者で学生で無敵の鶴巻宰(国士大)を下すなど、ノーシードから決勝まで駆け上がってきた。

 菅にとっては、けがで1年ものブランクを作ったとはいえ、前回大会で煮え湯を飲まされた相手だ。「自分は挑戦者。せめて攻めて攻めまくろう」と心に決めてマットに上がった。第2ピリオドに投げ技を食らう場面もあったが、すかさず返し技で同点に。最後は「自分はナショナルチームでずっと練習してきたので負けるわけにはいかなかった」という意地を見せ、岩崎の猛攻をしのぎ切った。

 昨年は世界選手権、アジア大会と立て続けに大きな国際大会を経験することができた。国内の激戦区だったグレコローマン74s級を一歩抜け出そうという逸材に期待は集まったが、海外では思うようなレスリングはできず、結果は出なかった。この勝利で、一段上に上がれたことは間違いないだろう。

 6月の全日本選抜選手権に勝って2年連続で世界選手権出場を狙う菅は「トレーニングは今まで通りでいいと思う。戦術をもっと考えて戦いたい」と照準を世界に絞る。1976年のモントリオール五輪に出場し4位に入賞した父、芳松さんを北京に連れて行くことが王者の夢である。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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