【全日本選手権優勝選手】女子55kg級・吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)【2008年12月24日】



 2004年アテネ&2008年北京両五輪の金メダリスト、吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)が女子55kg級で7連覇を飾った。この記録は浜口京子の12連覇に続き、2位タイとなる記録(過去、坂本涼子と浦野弥生が達成)。中京女大時代の恩師の栄和人・日本協会女子強化委員長の全日本優勝記録が「6度」なので、7度日本一は数字のうえで恩師越え果たした。

 何度も書かれてきたことだが、吉田にとって今年は連勝記録が「119」でストップするという「不運なスタート」(本人談)だった。しかし北京五輪で2大会連続金メダルを獲得し、すぐに訪れた東京開催の世界女子選手権でも優勝し、磐石ぶりをみせつけた。「世界選手権の時点からロンドン・オリンピックを目指してのスタートでした」という吉田は、この全日本選手権は、いわばロンドン五輪への道の第2ラウンドといえた。

 その第2ラウンドも危なげない内容の優勝だった。初戦(2回戦)の渡部悠香(日体大)を第1ピリオドで、準決勝の車屋綾香(日大)は第2ピリオドで、2試合連続フォール勝ちして決勝へ駒を進めた。反対側からは松川知華子(ジャパンビバレッジ)が勝ち上がる。過去に四度戦っている両者。松川の打倒・吉田にかける意気込みは、この階級随一といってもいいだろう。

 だが、吉田の視線の先にあるのはロンドン五輪。松川の技術の向上は試合を見てもうかがえたが、吉田を凌駕(りょうが)するには至らなかった。手四つの攻防で両者が相手の出方をうかがい、20秒経ったところで吉田が松川の左足に片足タックルを決めてテークダウンを奪うと、グラウンドでコントロールしていく。ニアフォールの体勢にもっていき、ポイントが加点され5−0に。なおも吉田が攻め続ける。松川もブリッジで耐えるが、力尽きて吉田が見事にフォール勝ち。あわせて天皇杯も獲得した。


 吉田沙保里の話「オリンピックが終わって、すぐに世界選手権があって、両大会で優勝できたのですが、今年は黒星スタートだった。それがあったからこそ、ここで勝てたと思います。攻め続けるレスリングは自分でもできたと思いますが、(相手の懐に)入ろう、入ろうとしすぎて、バタバタしてしまった。

 でも、黒星があったからこそ、今年は精神面で成長できたと思います。すごく勉強させられました。勝ち続けていた時に気がつかなかったことが、負けたことで気づかされたこともあります。返されないタックルを誰よりも練習したつもりです。気がついてみたら、(今大会は)北京五輪のメダリストは私だけの出場だったのですが、出場すると決めていましたし、言ったからにはやるのが自分の性格です。

 フリー60s級で優勝した前田(翔吾)選手は中京女子大でずっと一緒に練習していたんです。私の直前の試合で優勝してくれたので元気づけにもなりました。スパーリングでは味わえないのが試合なんですよね。119まで届くかどうかわかりませんが、09年以降、出場する試合は全部勝ちます」

(取材・文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)


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