【全日本選手権優勝選手】男子グレコローマン84kg級・斎川哲克(両毛ヤクルト販売)【2008年12月22日】



 男子グレコローマン84kg級(旧85kg級を含む)で9連覇を達成していた松本慎吾(一宮運輸)がフリースタイル96kg級にエントリー。キング不在の中、同級の優勝争いは混とんとするかに思われたが、ふたを開けれ見れば松本の後継者と目される斎川哲克(両毛ヤクルト販売)が安定した強さを見せ、大会初優勝を遂げた。

 初優勝を手にした斎川の顔に笑顔はなかった。「ひとつの試合が終わってほっとしています。でも、内容が良くなかったので、反省が多いですね。もっとスタンドで積極的に攻めなくてはいけなかたのに体が動かなかった…」。この2年ほどは96kg級の試合に出場し、84kg級での全日本選手権は2年ぶりだったことについても「レスリングはレスリングですから階級は気にしていません」とぶっきらぼうな口調で話した。

 国内の闘いで満足なんかできない。それは尊敬すべき松本がずっと貫いてきた姿勢だ。言うまでもなく、グレコローマンの重量級は日本人にとってハードルが高い。松本はそこで世界のトップレスラーと互角以上に戦い、ヨーロッパやアジアなど海外の選手からもリスペクトされる存在になった。

 そんなレベルまで達した松本が国内選手を相手に試合をすると、俵返しに次ぐ俵返し。つまり圧勝につぐ圧勝だった。そんなカリスマレスラーに追いつき、追い越そうというのなら、確かに初優勝で満足してはいられない。

 今後、国内で抜きん出た存在となり、世界で勝負するためには、技術的にも体力的にもかなりのレベルアップが必要だろう。本人が「自分はまだまだ世界で闘えない。これからは積極的に海外の選手と練習をしていきたい」と自覚するように、海外武者修行も必須だ。尊敬する先輩に肩を並べるまでには時間がかかりそうだが、斎川は「2009年は世代交代する年になると思うので、元気な日本代表を先輩たちと一緒に作っていきたい」とポスト松本の自覚は十分だった。

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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