【全日本選手権優勝選手】男子グレコローマン120kg級・中村淳志(カンサイ)【2008年12月22日】



 昨年の全日本選手権以来、明治乳業杯全日本選抜選手権を含めて3大会連続同じ顔合わせとなった男子グレコローマン120kg級決勝は、中村淳志(カンサイ)が連覇を狙った新庄寛和(自衛隊)を下し、悲願の初優勝を決めた。7月の世界ジュニア選手権で日本選手史上初の3位入賞の快挙を成し遂げた平川臣一(専大)は、計量失格により欠場した。

 スタンドの攻防で両者の頭部が激しくぶつかりあい、痛そうな鈍い音がマットの下まで届いてきた。序盤からヒートアップしたライバル対決は、実績のある新庄が第1ピリオドを先制。後のなくなった中村は、第2ピリオド終盤、新庄が得意とするがぶりを「細かく下がれば大丈夫」との信念で耐え抜き、試合を振り出しに戻した。

 第3ピリオド、迎えた最終局面では「国体ではローリングでやられてしまったので、今回は死ぬほど(ローリング対策を)練習してきた」という鉄壁のディフェンスを駆使し、ついに初の全日本の頂点へ。勝利インタビューのマイクを向けられると「3大会連続2位が続いていたので、もうダメかと思ったけど、仲間やコーチに信じれば勝てると励まされてがんばることができた」と大粒の汗をうれしそうにぬぐった。

 今春に拓大を卒業。父親が経営する産業廃棄物処理会社「カンサイ」の所属となり、日体大の大学院に籍を置いてレスリングを続ける環境を確保した。春には北京五輪の予選にも出場。重量級における世界の壁の厚さも味わった。「海外の選手は強かった。力はもちろん、精神的にも強いと感じた」。

 以来、中村は「自分だって今度こそは(世界で勝利する)」との思いを胸に、練習に励むようになったという。世界の舞台で味わったほろ苦い経験は成長の糧となり、全日本選手権初制覇という形になって現れた。

 2009年の抱負を問われた中村は「来年の明治乳業杯に勝って、世界選手権に出場したい」と迷わず即答した。世界にひしめく重量級の強豪レスラーと勝負するという決意が、これからも中村を成長させるだろう。

(取材・文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)


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