【特集】新潟国体へ向けて着実なステップを!…男子フリースタイル74kg級の萱森浩輝(新潟・新潟県央工高教)【2008年12月19日】



 「Road to London」に向けての第1歩となる天皇杯全日本選手権。2005年の大会で7連覇を達成した小幡邦彦(ALSOK綜合警備保障)が階級アップした後、フリースタイル74kg級は戦国時代が続いている。小幡と力が拮抗(きっこう)していた長島和幸(クリナップ)は、06年度から2連覇を達成しているが、五輪・世界選手権の出場はなし。

 小幡が抜けた後、世界選手権に出場したのが09年新潟国体のエース・萱森浩輝(新潟・新潟県央高校教)だ。日体大時代はほぼ無冠にもかかわらず、地元に戻って高校の教員をやりつつ、高校生との練習で力をつけた。06年度の全日本選手権で小幡の8連覇を阻んで準優勝を飾ると、07年の全日本選抜選手権では長島に本戦、プレーオフと連勝し、北京五輪出場権がかかったアゼルバイジャン世界選手権に出場した。今年6月の全日本選抜選手権も勝って2連覇を達成した。

■全日本選抜チャンピオンながら安定性に欠ける一面も

 今大会も優勝候補に挙げられるが、本人は「今年の選抜選手権優勝は日本一という実感がない」と話す。萱森にとって、最大のライバルは尊敬する小幡と長年競り合ってきた長島だ。「長島さんが出ていませんでしたし、(大会の)規模も小さかった」と振り返る。北京五輪代表選考となった60kg級に比べて、世界選手権も北京五輪もかかっていない大会での2連覇では、本当に優勝した気がしないのだろう。

 優勝した内容も他を寄せ付けない圧倒的な強さで勝ったわけではなく、1−0や1−1のラストポイントでピリオドを取るケースもあり、均衡した試合ばかり。「まだまだダメです。(強さに)安定感がありません」と、萱森からは反省の言葉が次々と出てくる(右写真=決勝で高谷惣亮を破って2連覇達成の萱森)

 今回のエントリーの中で世界選手権に出場した経験があるのは66kg級から階級を上げてきた鈴木崇之(警視庁)と萱森だけで、すっかりエリートの仲間入りとも思える萱森だが、2008年は浮き沈みが激しかった。全日本選抜選手権で優勝した1ヵ月後の全日本社会人選手権では、小原康司(自衛隊)にストレートで敗退し3位に終わった。「第1ピリオドを取られて焦ってしまい、気持ちが空回りしてしまった。記憶に一番残る悪い試合でした」。

 9月の大分国体では、長島に対してクリンチで優先権を取ったものの生かせず、第1ピリオドを取られた。それが響いて1−2で敗退し3位どまり。自身の“プレ国体”で優勝できなかった。恩師の原喜彦・県央工高監督から、「クリンチにまで持ち込むからだめなんだ」と厳しく言われた。

 萱森のレスリングスタイルは、前へ前へと攻めまくるアグレッシブなレスリング。クリンチ勝負になりにくいタイプだ。だが、「それが試合になると練習どおりにいかない」と言う。「全日本選手権ではいつもどおりに試合をすること」が目標。アグレッシブに点数を取りにいけるかがキーポイントになりそうだ。

■国体優勝に向けて負けられない闘いが始まる

 萱森の最大の目標は「新潟国体での優勝」だ。国体は出場選手層や組み合わせは全日本選手権レベルの大会と変わらない。「国体で絶対に優勝できるように、その前の大会でも確実に勝ちたい。74kg級といえば“萱森”と言われる存在になりたい」と絶対王者を目指す。

 “チーム新潟”は国体の総合優勝に向けて、いい仕上がりを見せている。今年の社会人年間MVPは新潟県協会所属のグレコローマン55kg級の平尾清晴だ。ことしの大分は地元開催に入賞も逃してしまい、錦を飾れなかった。勝負の厳しさを大分で知った萱森は気を引き締める。「国体をお祭りだと思っていないです。チームはスパルタ方式で練習しています」。

新潟県の総合優勝のために、全日本選手権から優勝の道のりを脳裏に叩き込む予定だ。 「今まで一番調子がいいので」と最高の仕上がりの様子を見せる萱森。その調子のよさを22日のマットで発揮できるか−。

(文=増渕由気子)


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