【特集】学生選手の指導のため、フリースタイルに挑戦…グレコローマンのエース、松本慎吾(一宮運輸)【2008年11月30日】



 2012年ロンドン五輪へ向けた強化体制で、男子のナショナルチーム(グレコローマン)のコーチに就任する予定の北京五輪グレコローマン84s級代表の松本慎吾(一宮運輸=右写真)が、12月21〜23日に行われる天皇杯全日本選手権(東京・代々木第二体育館)で、監督推薦でフリースタイル96s級にエントリーした(注・監督推薦選手の出場の可否は強化委員会によってまもなく決定される)。

 北京五輪に直結する昨年の大会で9連覇を達成し、「国内に目標はない」と言い切った松本。加えて2大会連続の五輪出場を成し遂げ、重量級のエースとして日本代表を長年引っ張ってきた。そのため、北京五輪のマットが最後の試合姿だと思われていた。

 11月30日、東日本学生秋季新人戦が行われている東京・ナショナルトレーニングセンター(NTC)で、マットサイドで学生選手たちの試合を見守っていた松本に、その意図を聞いてみると、「来年から学生の指導をする。そのためにフリースタイルの試合をやっておきたい」と、その真意を説明した。

 9月の時点でフリースタイルで全日本選手権に出場する可能性をにおわせていた松本だが、「あの時点では気持ちは半分だった」と振り返る。来年4月から日体大の教員となり、レスリング部のコーチに就任することが決まり、気持ちが固まったようだ。

■男子2人目の10連覇達成だが、記録は「興味なし」ときっぱり

 今大会で松本が優勝すれば、階級をまたいで大会10連覇を達成することになる。男子では1991年の森山泰年(最終的に14連覇)以来の快挙になるが、松本は「10度目の優勝に興味はない」とキッパリ。コーチとしての自覚を持つことが試合へのモチベーションのようだ(左写真=学生の試合を見守る松本)
 
 大学卒業後の練習はもっぱらグレコローマンだった。フリースタイルは1998年に学生の2大会(全日本学生選手権、全日本大学選手権)に輝いて以来、試合から遠ざかっている。現在も練習はグレコローマンが中心だが、安達巧監督が「松本篤史(大学二冠王)や下屋敷圭貴(学生王者)とよく練習をやっている」と話すように、フリースタイル参戦の準備は整いつつある。

 エントリーした96s級には、2008年アジア選手権代表で6月の明治乳業杯全日本選抜選手権で優勝した磯川孝雄(山口県協会)がいる。恩師の西口茂樹・拓大部長は「磯川にとってもいいこと」と歓迎。磯川は新人戦の応援を取りやめて練習に取り組んでおり、気合が入っているようだ。

 全日本選手権フリースタイル96s級は、若手のポープ・磯川か、それとも日本グレコローマン重量級のエース・松本慎吾か−。

(文・撮影=増渕由気子)


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