【特集】「選手の個性を伸ばしたい」…拓大・須藤新監督がデビュー【2008年11月17日】



 11月から拓大の新監督に就任した元プロ総合格闘家の須藤元気氏が、全日本大学選手権で初さい配をふるった。3連覇がかかった拓大だったが結果は2位。それでも優勝者を2人も出すなど、強豪校としての力は十分に発揮した。

 初日のスタートはひな壇に上がって、他大学の監督・関係者のあいさつ回りが続いた。アマとプロの交流がさかんなレスリング界だけあって、「みなさん、とっても温かかった」と須藤監督もレスリング界のキャパシティの広さに感激したようだ。

 その後は時にセコンドについて選手をサポート。セコンドデビューを果たしたのは66kg級の米満達弘(主将)の初戦(右写真)。「いきなりでしたので、何をすればいいのか…」と少々戸惑ったそうだが、西口茂樹部長の「レスリングとプロ格闘技は一緒だから」というアドバイスで、すぐにコツを習得。「選手の足が止まっていたり、動きが堅かったりしたのはすぐに分かりました。試合中にかける言葉は総合格闘技と同じでしたね」と須藤監督。優勝を行方を占う大会2日目のセコンドでは、手を口元にあてて、アドバイスを熱心に送る須藤監督の姿があった。



■スーパールーキーの高谷惣亮に惚れた!

 今後も都合がつく限り試合会場には足を運び、セコンドなどで選手たちのサポートを行うという。さらに「学生たちと一緒に練習したい。もう一度レスリングをやりたい」と学生たちと盛んに交流を計る意向を示した。「合宿で学生たちと一緒に寝起きして練習して…。早く合宿したいですね。拓大には西口部長というカリスマ的な指導者がいる。僕はまだ30歳なので兄貴的な存在になれれば」と、監督としてのプランも出来上がっているようだ。

 須藤監督がさっそく目をつけた選手は、スーパールーキーの高谷惣亮だった。高谷は初日の74s級で史上16人目の大学1年生チャンピオンに輝いている。「惣亮は独特の雰囲気を持っている。個性的な髪型のところとか。プロをやっていたので、“色”のある選手は好きですね。彼の前髪は僕のハートをつかみました」とすぐに惚れ込んだ。「惣亮は他の選手と周波数が違って独特なので、方向性だけ導いてあげれば強くなっていくと思います」と話した。

 その考え方は須藤監督の経験に基づいている。須藤監督はレスリング時代、グレコローマンでもフリースタイルでも「そり投げ」一本にこだわり、タックルをやらなかった。「自分も枠にはまらないで(レスリングを)やらせてもらった。それを恩師が認めてくれて、(レスリングを)自由に表現できました。そのおかげでプロでも成功できたんだと思います」。

 高谷ら個性的な拓大レスラーの伸びしろを引き出すのに、須藤監督は適任者なのかもしれない。須藤監督の次のセコンド姿は12月に見られそうだ。須藤監督の“全日本選手権セコンドデビュー”も大会の楽しみの一つになりそうだ(左写真=試合後、選手に話をする須藤監督)

(文=増渕由気子、撮影=樋口郁夫)


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