【特集】自信をつけて脱皮した留学生が四冠王を達成…120kg級・ボリス・ムジコフ(山梨学院大)【2008年11月17日】



 ロシアからの留学生、120kg級のボリス・ムジコフ(山梨学院大=右写真)が1回戦で最大のライバルと思われていた荒木田進謙(専大)をフォールで撃破。その勢いで決勝まで快勝続きで勝ち上がり、最後の相沢優人(日大)戦もテクニカルフォールの連続で圧勝。学生四冠王者(全日本学生選手権両スタイル、全日本大学グレコローマン選手権、全日本大学選手権)に輝いた。

 「荒木田はやりにくい相手なんです」。8月の全日本学生選手権で破った相手ではあるが、今度も勝てる保証はない。「ちょっと緊張したけど、自信をもって闘った」そうで、その自信も手伝って最大の難敵を破ると、あとは優勝へ向かって一直線。「あの勝利で、優勝できると思いました」と言う。

 来日した2006年は、全日本学生選手権(インカレ)、全日本大学選手権ともに荒木田に敗れており、決してずば抜けたロシア選手ではなかった。山梨学院大の高田監督は「性格が優しすぎる。練習ではできても、試合になると何もできなかった。顔が青ざめていることもあった」と振り返る。

■今夏のインカレ両スタイル制覇で自信がついた!

 しかし今夏、インカレで両スタイル制覇したあたりから自信を持ってマットに上がれるようになったという。高田監督は「タックルとガッツレンチのある選手が自信を持てば、勝てるようになるよ」と、勝因は自信と分析。「来年も4冠王を目指してほしい」と期待する。

 日本国籍でないため全日本選手権には出場できないが、6月の全日本選抜選手権優勝の荒木田に連勝した事実は、日本ではナンバーワンの実力を意味するだろう。「ロシア選手権に出て、ロシア代表として世界選手権などを目指すのは?」と水を向けると、「ロシアは強い選手が多いから…」と、ちょっぴり控えめ。

 実は今年、故郷のカルメキア自治共和国の代表としてオセアチア地方の大会に出場し、1回戦で敗れていた。ロシアのトップレベルの実力はこんなものではないことは肌で知っている。しかし「強い選手と闘ってみたい。機会があれば、国際大会にも出てみたい」と話し、気持ちは上を向いている。

 技と自信と向上心が身についた留学生は、来年はどんな活躍を見せてくれるか。高田監督は「ボリスの存在は荒木田の刺戟にもなる。ライバルとしてお互いのレベルアップをあはってほしい」と、日本重量級の奮起も期待していた(右写真=決勝でポイントを重ねるムジコフ)

(文=樋口郁夫、試合撮影=増渕由気子)


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