【特集】五輪銀メダリストの指導で学生二冠王者に成長…55kg級・守田泰弘(日体大)【2008年11月16日】



 55kg級の守田泰弘(日体大)には、3年生ながら日体大代表の貫禄があった。8月の全日本学生選手権(インカレ)に引き続いて、全日本大学選手権も制覇。徳山大の監督である父・守田武史監督の前で大学二冠を達成した。決勝戦では、序盤こそ慎重になったが、第2ピリオドは得意のタックルで均衡を破ると、終始優位な試合を展開した。北京五輪銅メダリストの湯元健一コーチ(日体大助手)も、「よくがんばった」と合格点を与えるほどの勝利だった。

 守田は8月のインカレで優勝した後、白星街道を続けている。守田は「北京五輪を境に変わったような気がする」と分析する。この夏、北京五輪銀メダリストとなった松永共広(ALSOK綜合警備保障)のスパーリングパートナーとして北京に帯同した。そのために日体大恒例の草津合宿には参加できなかったが、百聞は一見にしかかず。五輪でのさまざまな経験が守田のレスリングをガラリと変え、帰国直後に行われたインカレでは練習量のハンディをものともせずに初優勝を果たした。

■松永の銀メダル獲得を間近で見て大きく成長

 北京五輪で見て来たものだけが守田を変えたのではない。日本屈指の技術派である松永のパートナーを務めたことも大きかった。松永から北京五輪までのパートナに指名され、全日本合宿のたびに松永に帯同した。松永が五輪で銀メダルに輝くまでの道のりを、誰よりも知っている。「松永さんの普段の練習から、試合前の調整も見ていました。減量に関してもとても勉強になりました。それが自信になっています」。時には松永独自の技も教えてもらえたようだ。「松永さんの技を自分流にアレンジして、今大会も使ってみました」。

 精神的にも成長した。2回戦の大関亮太(青山学院大)戦では第1ピリオドを1−4で失い、周囲をヒヤリとさせたが、すぐに切り替えて冷静に逆転勝ちした。「そのへんも五輪パートナー効果」と守田は言う。

 北京五輪後の55s級は、全日本選抜選手権王者の湯元進一(自衛隊)と、おおいたチャレンジ国体優勝の稲葉泰弘(警視庁)が中心となると思われていたが、学生二冠王者の守田の急成長により分からなくなってきた。守田も「今年の目標は全日本選手権を取ることです」と、学生での全日本タイトル制覇に意気込みを見せている。北京五輪後の守田の無敗伝説は12月の全日本選手権でも実現するか−。

(文・撮影=増渕由気子)


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