【特集】指導者としての挑戦がスタート…五輪2度出場の池松和彦(福岡大助手)【2008年11月15日】



 2004年アテネ五輪と2008年北京五輪に出場し、今年10月に福岡大スポーツ科学部助手に採用された男子フリースタイル66kg級の池松和彦選手(右写真)が、コーチとして全日本レベルの大会にデビュー。「すぐ勝てるようにはならないけど、全日本選手権に何人も出場できるチームを目指したい」と燃えている。

 福岡大は、かつては西日本西日本学生リーグ戦で優勝を争うチームだった。しかし、最近は二部リーグに低迷することもあり、今春のリーグ戦で優勝し一部に復帰ばかり。日体大で鍛えられ、五輪代表になった人間にとっては、「なぜ、こんな技ができないのかな」とじれったくなることも多いであろうレベルだ。

 もちろん選手は一生懸命にやっている。みんなまじめで、話をしっかり聞いてくれるという。しかし「言われたこと以上はやらない。工夫してやることもない」と物足りない面がある。「本当に分かっているのかな、と思う時もある」そうで、指導に食いついてくるような選手がいないのが、ちょっと寂しい様子。

 技術的にも、足の送り方がバラバラだったり、クラッチの手の向きが上下逆だったり、基本から教えなければならない場面にも出くわす。初めてずくしのことばかり。

 初体験といえば、遠征の連続も経験したことがない。この大会に参加するにあたっても、福岡から新潟の飛行機は1日1便しか飛んでいない。その便では計量に間に合わないため、福岡を早朝出発する新幹線を乗り継いで新潟まで来た。東京での乗換えを含めて8時間。来週は西日本学生秋季リーグ戦で大阪へ行かねばならない。

 大変なことの連続だが、もう北京オリンピックことを思い出すこともないそうで、新たな人生に燃えている。また、「まだ体が動くし、出る責任があると思います」と、12月の天皇杯全日本選手権にも出場する予定という。当然、選手に手本を見せる意味もあるのだろう。

 「選手の強くなりたいという気持ちと、コーチの強くしたい、という気持ちが一致しなければ、いい指導はできない。この2つを一致させて頑張りたい」。新たな挑戦は始まったばかり。

(文=樋口郁夫、撮影=増渕由気子)


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