【特集】斎川哲克(栃木・両毛ヤクルト)が国体3連覇で、北京五輪代表超え果たす【2008年10月3日】



 次世代の真のエースになるために、北京五輪の代表を超える−。「チャレンジ! おおいた国体」の成年グレコローマン96s級で3連覇を達成した斎川哲克(栃木・両毛ヤクルト販売、右写真=ライバル加藤を倒しての優勝にバック転の舞を見せる)は、この国体にかけていた。

 大学1年生でグレコローマン84kg級の学生王者に輝き、全日本選手権でもその才能を発揮。斎川は北京五輪選考レースで同階級の不動のエース・松本慎吾を脅かすのではと思われていたほど。

 だが、重要な局面でいつもけがに泣かされてきた。昨年秋に加藤賢三が五輪出場権を獲得すると、96s級にシフトチェンジ。五輪切符の“横取り”を画策したが、試合の1週間前に肩を負傷。12月の天皇杯全日本選手権では痛々しいテーピングが巻かれた状況で強行出場した末、決勝で加藤賢三に屈辱のフォール負けを喫した。

 「フォールで負けたのは久しぶりで、ふがいなかった。この借りをどうしても返したかった」

■100%の状態で臨んだ最後のチャンス

 10ヶ月ぶりの復帰戦として3連覇のかかる国体にエントリーした斎川に朗報が入った。北京五輪で引退宣言していた加藤が国体を“ラストマッチ”に選んだため、リベンジを果たす最後のチャンスがめぐってきたのだ。「国体でのモチベーションはかなり上がっていました」と振り返る斎川だが、栃木県のエースとしての重圧も加わったためか、最高の状態で臨んだにもかかわらず、準決勝までは気合が空回りして失点する場面が見られた。

 だが、決勝で加藤を目の前にすると、集中力が一気に高まった。開始早々、場外に追いやられて簡単に1失点。これは“作戦通り”の失点。投げ技がうまい加藤対策のため、首投げの餌食にならないように、前へ出過ぎないことと、手の位置に気をつけて闘った結果だ。

 加藤の得意なスタンドを回避すると、斎川得意のグラウンドの時間がやってくる。「松本(慎吾)、笹本(睦)両先輩が応援してくれた」と打倒・加藤に向けて、日本グレコローマンの双璧が徹底アドバイス。ローリングなどスキル面も十分に仕込んでくれた。

 その成果は十分にあった。こん身のローリングを決めて第1ピリオドを奪取
(左写真=加藤賢三をローリングで回す斎川)。第2ピリオドはスタンドで加藤の背後に回って、そのまま豪快に加藤をバック投げで投げるなど、テクニカルフォールで優勝を飾った。「初優勝したときよりもうれしいです」。国体3度目の頂点は今年の不調を吹き飛ばす会心の勝利だった。

■ジャパンの斎川が始動! ロンドン五輪出場宣言

 「世界なんて見えない。松本先輩の背中しか見えない」―。同世代ではぶっちぎりの強さながら、松本&加藤を超えられず、斎川は世界への目標をまったく口にしなかった。だが、五輪代表の加藤にリベンジを果たし、ついにその封印を解いた。「ロンドン五輪を目指します。そこが集大成になるので−」。世界5位を超え、世代交代を無事終えた斎川が、日本重量級の真のエースとして第1歩を踏みしめた。

(文・撮影=増渕由気子)



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