【特集】打倒東日本に情熱を燃やす徳山大・守田武史監督のもうひとつの夢は、息子のロンドン五輪出場【2008年9月2日】



 ここ数年、全日本学生選手権は東日本学生連盟と西日本学生連盟が交互に主催している。今年は西日本主催。しかし全体的に東日本連盟所属の選手の活躍が目立つ。その中で、「関東に追いつけ、追い越せ」のスローガンを掲げて、奮闘するチームがある。それが守田武史監督率いる徳山大(右写真=学生王者となった長男・泰弘とともに)だ。

■徳山大の指導を20年続け、当面の目標は2011年山口国体

 徳山大OBでもある守田氏は徳山大コーチに5年、監督業に15年とかれこれ20年も徳山大を率いている。教え子はグレコローマン66s級で北京五輪最終予選に出場した藤村義(現自衛隊)ら多数。大学の経済学部ビジネス戦略科に体育コースが近年新設された。社会情勢を勉強しながら体育教師の免許が取れるという画期的なコースのため、毎年10名ほど将来が楽しみな選手が入部。それに伴い選手層もだいぶ厚くなった。

 さらに頼もしいのは守田氏の直下にいるコーチ陣。山口県は2011年に国体開催を控えており、国体の要員が徳山大のコーチとして携わっている。元学生王者の柴田寛(山口県体協)、元世界選手権代表の沢田直樹(徳山大職)、前社会人王者の武田佑基(山口県協会)と豪華な顔ぶれがそろう。

 その効果はてき面で、昨年の全日本大学選手権84kg級では、藤永真孝が学生王者の門間順輝を倒して日体大4冠の夢を打ち砕き、今年の全日本選抜選手権ではフリースタイル96s級で北園昭一が準優勝に輝いた(左写真=2006年秋の西日本学生リーグ戦で優勝した徳山大)

 そのほか、2006年ドーハ・アジア大会銀メダリストの小島豪臣(周南システム産業)や、今年3月のアジア選手権代表の磯川孝生(山口県協会)らも山口県の所属選手。徳山大の学生たちはこうしたトップアスリートたちにもまれて強くなってきた。

■3年以内に徳山大のシングレットの選手を全日本王者へ

 「国体まであと3年。国体開催で強化が十分はかれるうちに、徳山大のシングレットで全日本チャンピオンに輝く姿を見てみたい。また、団体戦でも東日本を脅かすようなチームを作って、フリー王座(全日本学生王座決定戦)や大学グレコ選手権などで3番以内に入りたい」と守田監督。

 “あと3年”と期間を決めて大学の強化にいそしむ守田氏だが、もうひとつ、“あと3年”の楽しみがある。現在、長男・泰弘が日体大3年生、次男・陽が国士大1年生で、ともにロンドン五輪を目指すにはちょうどいい時期(右写真:長男・泰弘=左、次男・陽とともに)。特に長男・泰弘は今大会で初優勝を飾り、ニューヒーローとなった。

 泰弘のインカレ制覇は、北京五輪金メダリストの吉田沙保里や銅メダリストの湯元健一のように、父親の厳しい指導あってこそかと思われるが、守田氏の場合は少し違う。「私はレスリングの指導に関してノータッチでした。負けて怒ったことはありません」。勝つことよりも、大人になるためのステップとしてレスリングをやらせてきたという。

 それでも、泰弘が北京五輪で銀メダルを獲得した松永共広の練習パートナーとして北京に帯同できると聞いた時は、「うれしかった」と素直な父親の顔をのぞかせた。今大会も、下馬評を覆して第3シードからトーナメントを制した泰弘の結果を周囲から祝福されるたびに“親父満点”の笑顔を振りまいていた。

 山口国体まであと3年。守田氏は、徳山大監督として、そして泰弘、陽両選手の親父として、楽しみな3年間になりそうだ。

(文・撮影=増渕由気子)


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