【特集】日本チーム初のグレコ世界ジュニア3位の実力は本物! 急速に進化している平川臣一(専大)【2008年8月30日】




 7月の世界ジュニア選手権(トルコ)の男子グレコローマン120s級で、同スタイルでこのの大会日本史上初となる銅メダルを獲得した平川臣一(専大)の成長が止まらない。全日本学生選手権120s級にエントリーした平川は、準々決勝まで2−0のストレートで勝ち進み、準決勝で敗れたが3位入賞(右写真)。同級生で盟友の荒木田進謙(専大)と一緒に表彰台に堂々と上がった。

 平川は北京五輪代表の池松和彦(10月から福岡大助手)を輩出した福岡・三井高出身。全国大会でベスト16が最高で「三井の伝統をぶち壊してしまった」と高校時代を振り返る。だが高校時代の努力は専大に入ってから実を結ぶ。昨年、東日本秋季学生新人戦の優勝をきっかけに、勝ちぐせがついた。新人戦での優勝は「コイントスが良かったから」と、テクニカルポイントを取らずに、くじ運で勝ち進んだことを強調したが、平川の実力は確実に上がっていた。

■平川が強くなった2つの秘密

 それは重量級に定評のある専大の環境で毎日もまれているからだ。高校時代から全日本のトップクラスで活躍していた荒木田とは公私に渡って仲がいい。荒木田はキッパリと言う。「ロンドン五輪に平川と行きたい」。そのために、同士をも強くすることが自分の練習の一部のようだ。荒木田との練習効果で、「グラウンドのディフェンスが良くなった」と平川もご満悦。

 ディフェンスだけでなく、攻撃面もがぶり返しがさえるようになり、「自分のスタイルができてきた」。その“自分のスタイル”で世界ジュニア選手権も勝ち抜いた。「組み合わせが良かった。ボールピックアップも自分によく来た」と謙遜するが、勝った相手のキルギスタンとポーランドはグレコローマン大国。特にキルギスタンからはフォール勝ちを奪っての勝利は、堂々を胸を張れるはずだ。

 成長できた理由は盟友とのスパーリング効果だけではない。専大の久木留毅コーチは、グレコローマンの全日本コーチでもある。遠征で世界中を駆け回ってレスリングの最新情報をつかんでくる久木留コーチの指導が、専大の選手に正確に浸透している。今大会、準優勝2人、3位が3人と大健闘した専大グレコチーム。平川も例外ではなく久木留コーチの影響が大きかったようだ。

■優勝を逃し、本当の悔しさを知った平川

 インカレの表彰台はうれしかったが、手放しで喜べなかった。優勝したムジコフに準決勝で第1ピリオドを先取しながら、第2ピリオドで逆転フォール負けを喫したからだ。「スタンド残り10秒でいきなりクラッチを組まれたが、相手もバテていたので投げに来るとは思わなかった。あわせて組みに行ってしまったのを後悔している」。荒木田との同門対決という夢がかかっていただけに、自分のミスを悔やんだ。

 だた、今まではムジコフをロシア出身という肩書きだけで「強い」と決めつけていたが、第1ピリオドで、ムジコフをフォールの体勢に追いやったことが平川の自信につながった(左写真)将来、リアルタイガーマスクになるという夢の方向性は以前とまったく変わっていない。その夢を実現するために、今はただ強くなるだけだ。

 「次の目標は10月の全日本大学グレコローマン選手権で勝つこと。来年2月のデーブ・シュルツ国際大会(米国=毎年、学生選抜チームが出場)にも出てみたい」。荒木田とともにナショナル・チーム入りを目指す平川はやる気満々。今年の世界ジュニア選手権を境に今後は本格的にシニアに参戦していくが、大学生の平川にはもう一つ、でっかい舞台が待っている。

 それが来年、セルビア・ベオグラードで行われる“学生のオリンピック”ユニバーシアード大会だ。日本代表はまだ未定。平川がこの調子で頑張れば、日本代表となることも夢ではない。

(文・撮影=増渕由気子)


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