男子は旧ソ連勢が圧勝、米国、イラン、韓国は振るわず【2008年8月22日】



 今回のオリンピックの男子は東高西低−! 旧ソ連を中心とした旧社会主義圏の国が両スタイルで台頭し、米国、イランが不調という結果になった(右写真=旧ソ連勢が独占したフリースタイル96kg級表彰式。こうした階級が14階級中4階級あった)

 グレコローマンは7階級のうちロシアが3階級で優勝し、グルジア1階級、キューバ1階級(残りはフランスとイタリア)。28個のメダルのうち、旧ソ連が16個のメダルを取り57%を占めた。旧社会主義国となると19個となり3分の2を超える。

 昨年の世界選手権で優勝なしながらも国別対抗得点優勝の米国は「銅1」に終わり、韓国は1984年ロサンゼルス五輪から前回のアテネ五輪まで6大会連続で金メダルを取っていたが、金メダルの伝統を途切らせて「銅1」に終わった。旧ソ連を除くアジアは、韓国のほかは中国が「銀1」を取っただけだった。

 フリースタイルは、28個のメダルのうち旧ソ連勢が20個を獲得(スロバキアに移住した前ロシア選手を含む)で72%の占有率。84・96・120kg級の3階級は旧ソ連がメダルを独占した。7階級のうち西側でメダルを取ったのは米国(金1)、トルコ(金1)、日本(銀1・銅1)、イラン(銅1)、インド(銅1)の5ヶ国6個だけだった。

■コンタクトしての強さがある旧ソ連勢

 フリースタイルの旧ソ連の強さについて、和田貴広コーチ(日本協会専任コーチ)、佐藤満コーチ(専大教)ともコンタクトしてからの強さを挙げた。和田コーチは「組み合ってから、どう攻撃するか多くのパターン持っていた」と分析した。そのうえで、日本選手に対しては「がぶられた状態、脚を取られた状態、多くのパターンに対応できる練習を繰り返してきた。すべて追いつかなかったが、ある程度できてよけいな失点をやらなかったのが、メダル2個につながった」と言う。

 佐藤コーチは、日本がこのやり方を真似ればいいという意味ではなく、「崩しやフェイントを使い、日本独自に取れるタックルを身につけてほしい。そのためには体力が必要」と言う。

 かつてのフリースタイル王国の米国が落ちたのは、和田コーチは「このルールでは体力が必要だけど、そればかりではダメ。針の穴を通すような柔軟性が必要。それがなかった。かつてのジョン・スミス(五輪2度優勝)、ケビン・ジャクソン(バルセロナ五輪優勝)みたいな個性的な選手がいなくなった。みんな同じようなスタイル」と、佐藤コーチは「タックルが少ない。がっちり防御する選手が多かった。攻撃のないレスリングでは勝てない」と、それぞれ話した。



《男子各階級のメダル獲得国》

■グレコローマン
階 級
55kg級 ロシア アゼルバイジャン アルメニア 韓 国
60kg級 ロシア アゼルバイジャン キルギス カザフスタン
66kg級 フランス キルギス ウクライナ カザフスタン
74kg級 グルジア 中 国 ブルガリア フランス
84kg級 イタリア ハンガリー トルコ スウェーデン
96kg級 ロシア ドイツ 米 国 カザフスタン
120kg級 キューバ ロシア リトアニア アルメニア
■フリースタイル
階 級
55kg級 米 国 日 本 ブルガリア ロシア
60kg級 ロシア ウクライナ 日 本 イラン
66kg級 トルコ ウクライナ グルジア インド
74kg級 ロシア ウズベキスタン ベラルーシ ブルガリア
84kg級 グルジア タジギスタン ウクライナ ロシア
96kg級 ロシア カザフスタン グルジア カザフスタン
120kg級 ウズベキスタン ロシア スロバキア カザフスタ
※120kg級のスロバキアは前ロシア

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