松永共広(ALSOK綜合警備保障)が銀メダル、湯元健一(日体大)は銅メダル…北京オリンピック第6日【2008年8月19日】






 北京オリンピックのレスリング競技第6日は8月19日、中国農業大学体育館で男子フリースタイル2階級が行われ、55kg級の松永共広(ALSOK綜合警備保障=写真右)が銀メダル、60kg級の湯元健一(日体大助手=写真左)が銅メダルを獲得した。

 松永は1、2回戦を勝ったあと、3回戦で2003・05年世界王者のディルショド・マンスロフ(ウズベキスタン)と対戦。過去3戦3敗の相手を2−1で退けた。準決勝は昨年の世界チャンピオンのベシク・クドゥコフ(ロシア)を第2ピリオド、タックル返しによるフォールで下し、決勝進出を決めた。しかし決勝でパンアメリカン王者のヘンリー・セジュド(米国)に0−2で敗れ、日本20年ぶりの金メダルには手が届かなかった。

 湯元は、2回戦(初戦)でタジギスタン選手を破り、3回戦で今年のアジア王者のヨゴシュワル・ドット(インド)を2−1で下した。しかし準決勝で欧州チャンピオンのワシル・フェドルイシン(ウクライナ)に0−2で敗れた。その後の3位決定戦では、昨年世界3位のバザル・バザルグルエフ(キルギス)を破り、銅メダルを獲得した。

 男子のオリンピックでの銀メダルは、2000年シドニー五輪グレコローマン69kg級の永田克彦以来2大会ぶり。今回、男子グレコローマンでメダルなしに終わった日本だが、この日のメダル獲得で、戦後のオリンピックで、不参加だった1980年モスクワ五輪を除いて14大会連続でメダルを獲得した。

 第6日の成績は下記の通り。


 ◎男子フリースタイル

 【55kg級】松永共広(ALSOK綜合警備保障)      2位=19選手出場

1回戦 ○[フォール、2P1:48(1-0=2:05,F3-0)]Adam Diatta(セネガル)

 《試合経過》第1ピリオド、相手に圧力をかけ続けた松永だが決め手に欠いた。反撃も受けたが耐えて0−0。クリンチの攻撃権を得た松永が相手を場外に出してこのピリオドを先制。第2ピリオドもなかなかポイントが取れなかったが、1分30秒をすぎ、松永がタックルから大腰気味に投げてそのままフォール。

【1P】アフリカ代表相手を攻めた松永だが決め手に欠いた。 【1P】意外に強かったディアッタ。松永は必死の防御。 【1P】0−0でクリンチへ。攻撃を確実に実らせた。 【2P】タックルから一気にフォール。松永の本領発揮。

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2回戦 ○[2−0(5-0,3-0)]Sezar Akgul(トルコ)

 《試合経過》第1ピリオド中盤、松永がタックルで1点を取り、ニアフォールへ。さらにまたさきで攻めて5−0。第2ピリオドも中盤に松永がタックルでテークダウンを奪い、ガッツレンチで2点を加えた。

【2P】タックルで1点を取ったあと、グラウンドで攻めた。 【2P】第1、2Pとも余裕を持っての闘いで快勝。 【3P】いよいよウズベキスタン、ロシアの連戦を迎える。

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3回戦 ○[2−1(2-1,0-1,2-1)]Dilshod Mansrov(ウズベキスタン)

 《試合経過》第1ピリオドは一進一退で、終盤に松永が片足タックルで場外際に追い込み、2点となるテークダウンを決めた。マンスロフがタックルで1点を返したものの2−1。第2ピリオドもお互いにポイントが取れないあと、スタンドで回り込まれて痛恨の失点。0−1でピリオドスコアがタイへ。

 第3ピリオドは34秒、松永がタックルを仕掛けたが回り込まれて1失点。しかし1分24秒にタックルを返して1−1へ。松永はさらに相手を崩してテークダウンを奪い、2−1とした。

【1P】左脚を取って場外で倒す。2点が入った。 【2P】ストレート勝ちを狙って攻めたが、このピリオドは落とした。 【3P】0−1のあと、ラスト36秒にタックルで1−1へ。 【3P】1−1でも勝てたが、最後にタックルで2点目。積極的だった。

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準決勝 ○[フォール、2P1:35(3-0,F5-0)Besik Kudukhov(ロシア)

《試合経過》第1ピリオドは0−0のまま進み、ラスト10秒、相手ががぶり返し。松永はそれを崩して体を預け3−0として、このピリオドを先取。第2ピリオド中盤、松永が相手のタックルをかわして1点。さらにタックルにくる相手を、見事なタックル返しで投げ、一気にフォールを奪った。

【1P】世界王者との一戦。一進一退の攻防が続いた。 【1P】ラスト10秒、クドゥコフはがぶりから、がぶり返しを狙ったが、松永が抑え込み3点を取ってこのピリオドを制す。 【2P】中盤、相手のタックルをかわして回りこみ場外で1点。

【2P】逆転を狙ってタックルにきたクドゥコフ。松永はタックル返しで投げ、一気にフォールへ。世界王者を破ってホッとした表情を浮かべた。

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決 勝 ●[0−2(2-A2B,0-3)] Henry Cejudo(米国)

 《試合経過》第1ピリオドの1分14秒、松永が片足タックルで相手を押しだして1点を先制。その後、タックルを受けてしまって2点を取られ、すぐにバックを取り返して2−2としたが、ビッグポイントの差でこのピリオドを取られた。第2ピリオドは正面タックルを受けてしまい、背中からマットに落ちて3失点。この差を取り戻すことができず、試合終了を迎えた。

【1P】中盤、松永が片足タックルで先制。幸先よかったが…。 【1P】セジュドがタックルで反撃。こらえる松永。 【1P】両足タックルに持ち変えられ、抱え上げられた。2失点。このあと松永が上になって2−2だが、ビッグポイントの差でこのピリオドを取られた。

【2P】セジュドのタックルで痛恨の3失点。 【2P】反撃を試みる松永だが、時間はすぎていく。 【2P】最後は片足にしがみついた松永。ここでタイムアップ。 【2P】がっくりの松永の向こう側で喜ぶ米国陣営。

 【60kg級】湯元健一(日体大助手)     3位=19選手出場

1回戦  BYE

2回戦 ○[フォール、2P0:36(2-AL,F4-1)]Vitaly Koryakin(タジギスタン)

 《試合経過》第1ピリオド、湯元のタックルがこらえられ、両者がころがるなどグラウンドでもつれた。ビデオチェックの結果、両者2点だが、ラストポイントは相手で、このピリオドを先制された。第2ピリオドは序盤、湯本が相手のタックルをレッグホールドで返す。すぐに体を入れ替えられたが2−1へ。ここで相手はガッツレンチ。湯元は回されずに相手を押さえ、フォールした。

【1P】タックルへいった湯元。粘られ、なかなかポイントにならない。 【1P】相手のカウンターでもつれた。このシーンが湯元の2点か? 【1P】最後は湯元が抑え込まれ、2−2。ラストポイントで負け。 【2P】相手のガッツレンチを押さえた湯本。フォール勝ち。

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3回戦 ○[2−1(0-1,4-1,2-1)]Yogeshwar Dutt(インド)

 《試合経過》第1ピリオド中盤、がぶられた湯元がバックに回られてしまい1失点。0−1でこのピリオドを落とした。第2ピリオドは左足にタックルに入られた湯元がこらえて相手を回し、2点を取ったが、バックに回られ2−1。今度は湯元がタックルで攻め、今度は逆にレッグホールドを受けてしまった。微妙な状況となり、ビデオチェックの結果、湯元に2点が入り4−1へ。

 第3ピリオドは30秒にタックルを受けてしまった湯元が1分45秒、タックルで1点。1−1のラストポイントで勝った。

【1P】がぶられバックを取られた湯元。0−1で落とした。 【2P】相手のタックルを返し、湯元が2点。 【2P】その後、さらにもつれたが湯元に2点が入って4−1。 【3P】0−1のあと、湯元がタックルで2点を取って逆転。

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準決勝 ●[0−2(2-3,0-1)]Vasyl Fedorshyn(ウクライナ)

 《試合経過》第1ピリオド、48秒に湯元がテークダウンを奪われ0−1。相手のグラウンド攻撃に体を預けて2点を取ったが、最後はバックを取られて2−2へ。ラスト10秒、タックルで外へ出され2−3でこのピリオドを落とした。第2ピリオド、タックルで攻めた湯元だが、こらえられ、もつれた末に逆にバックに回れてしまった。ブレークになった時に残り時間はほとんどなく、痛恨の失点となった。

【1P】中盤にバックを取られて1失点。2−2としたが、最後は2−3へ。 【2P】片脚タックルへいったが、粘られて逆に1失点。グラウンドのもつれが長かっただけに、痛恨の失点となった。

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3位決定戦 ○[2−0(1-0=2:08,2-0)]Bazar Bazarguruev(キルギス)

 《試合経過》第1ピリオドはお互いに決め手に欠き、2分間を終わって0−0。ボールピックアップで攻撃権を得た湯元がしっかりとテークダウンを決めて先制した。第2ピリオド、湯元は1分20秒に左脚へのタックルで1点を先行。アンクルホールドで1点を加え2−0へ。そのスコアを守って銅メダルを決めた。

(撮影=保高幸子)
【1P】昨年の世界3位と真っ向から向き合った湯元。 【1P】お互いにポイントが取れずにクリンチ勝負へ。 【2P】勝負をかけた湯元の片足タックル。テークダウンを奪った。 【2P】アンクルホールドで追加ポイントを狙う。

【2P】やや不完全だったが、相手の体を回して2−0へ。 【2P】最後まで攻める姿勢を見せ、銅メダルを引き寄せた。 【2P】勝った瞬間、応援席へガッツポーズ。 【2P】苦楽をともにした和田貴広コーチに抱きついて歓喜の涙。


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