【特集】「選手のため、先入観を持たずにマットへ上がります」…斎藤修、芦田隆治審判員【2008年8月16日】






 いついかなる時も正確性が求められる――。それがレフェリーというもの。4年に一度の祭典、北京オリンピックで2人の日本人審判員が連日、熱戦を裁いている。斎藤修審判員(千葉・佐倉南高教=日本協会審判委員長、右写真の右)と芦田隆治審判員(大阪・大阪工芸高教、同左)だ。

 選手が世界最高を決める大会の出場権獲得を目指してしのぎを削るように、オリンピックの地でジャッジを許される審判員は、海外で行われる6回のセレクションをクリアした者だけである。

 そのため普段は高校で教鞭をとっている両審判員は、年間50日以上を海外で過ごし、国内を含めると100日以上は家を空ける。斎藤審判員は「家族よりも芦田君と一緒にいることが多いんじゃないかな」と笑うが、長期間、家と職場を離れてレスリングの審判として打ち込めるのも、家族の理解と職場の支えがあってこそだ。

 ともに16年間、審判としてジャッジをしてきた2人が、長いセレクションの末にやっと踏んだ北京のマット。喜びよりも先に感じたのは「緊張感」だったという。常日頃から「自分のホイッスルが勝負を決めてしまう。その選手の一生を決めてしまう」ということは肝に銘じているが、4年に一度の大会に挑む選手、セコンド、コーチの気迫はいつも以上。

 だからと言って緊張しすぎてしまっては、ホイッスルのタイミングがずれたり、いつもはないミスが起きてしまう。「必要なのは平常心」(芦田審判員)だ。

 「先入観を持つな。持たずにマットへ上あがれ」。審判ルールブックの第一条にはこんな言葉が刻まれている。過去の実績のあるなしで選手を判断してはならないという意味。すべてはマットの上で行われていることのみで判断する−。

 北京でも、「選手のことを一番に考え」2人は笛をふく。

(文=藤田絢子、撮影=増渕由気子)



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