【特集】「やっと、みんなの前に笑顔で立てます」…プレーオフ勝利の正田絢子【2008年6月26日】






 10月の東京開催・世界女子選手権の女子59kg級のプレーオフは、この階級の前世界チャンピオンの正田絢子(網野ク)に決まった。

 2005〜06年の世界選手権を連覇しながら、07年は敗者復活戦にも回れない惨敗を喫してしまった正田。出直しを図ろうとした時点で、63kg級の北京五輪代表枠は伊調馨に決定していた。正田は増量し、12月の天皇杯全日本選手権では72kg級に挑戦したが、浜口京子のが城は崩せなかった。

 五輪出場の夢は絶たれたが、世界選手権での復活を誓い、ジャパンビバレッジ杯全日本女子選手権で優勝して59kgの国内最強の座に復活した。正田不在の昨年の全日本選手権59kgを制したのが栄和人監督いわく“秘密兵器”の梶田瑞華(中京女大)だ。その梶田は4月の全日本女子選手権で2回戦敗退。その大会を制したのは正田だったため、世界選手権の代表はプレーオフに持ち越されることとなり、今回の明治乳業杯で両者の対決が実現することとなった。

 「初対戦なので、何をやってくるか分からなかった」という正田は、梶田の出方をうかがいながら、差し合いの攻防に応じる。一瞬のすきを許した正田はニアフォールの体勢にもっていかれかけたが、慌てることなくがぶり返しで梶田をニアフォールの体勢へ。これでビッグポイントも入り、3−0と先制。この後もバックに回って1ポイント加点して4−0で第1ピリオドを制した
(右写真=実力差を見せた正田)

 第2ピリオドに入ると梶田が片足タックルを狙うが、正田が切る。バックに回って1−0。さらにローリングを仕掛ける正田。これは梶田が防いだ。後がない梶田は両足タックルを狙いにいくが、正田がきっちり切る。結局、正田が第2ピリオドも制し、前世界チャンピオンの貫録を見せつけた。

 「クリンチだけにはいきたくなかった」という正田は、攻めることも心がけたことで、自分のレスリングができた。これが正田の勝因だったようだ。


 正田絢子の話「北京五輪に出場したいと思って、63kg級、72kg級と挑戦しましたが、ダメで夢が絶たれてしまって苦しい道のりでした。やっとみんなの前に笑顔で立てることができます。昨年の世界選手権で負けてしまい、世界で負けた借りは世界で返さなければと思っています。ポイントを取られないレスリングはできるのですが、ポイントを取るレスリングを心がけて練習を積み重ねてきました。

 苦しい時や不安になったこともありましたが、一緒に練習してきた高校生たちがバックアップしてくれました。本当に仲間に感謝しています。弟のことや五輪のことがありましたが、今は世界選手権に向けて気持ちを引き締めています。両親、監督、コーチが私の心の支えになってくれていますから」

(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)



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