【JB杯優勝選手特集】72kg級・鈴木博恵(立命館大)【2008年4月7日】








 72kg級の“本命中の本命”、浜口京子(ジャパンビバレッジ)が3月のアジア選手権(韓国)決勝でタックルに行った際に左手をねん挫し、完治していないことから今大会の出場を見合わせた。ジャパンビバレッジの所属だけに、自社の冠大会に出場したい気持ちは強かったが、ここで無理をして北京五輪に響いては元も子もないという判断もあったようだ。

 浜口は1996年に、この大会の前身の大会「全日本女子オープン選手権」で初優勝。99年に「ジャパンクイーンズカップ」に名称が変更されて以降、9連覇を達成しており、今大会で10連覇がかかっていた。会場に姿は見せ、落ち込んだ様子はなかったものの、内心は忸怩(じくじ)たる思いだったに違いない。

 その72kg級は、女王・浜口京子の負傷という思わぬアクシデントが発生したことで、出場5選手全員にチャンスが回ってきた。今回の出場メンバーの誰が優勝しても初の栄冠を手にすることになる。その中から抜け出したのが鈴木博恵(立命館大)と田中希枝(中京女大)だ。この2人はもちろん、浜口の強さと恐ろしさを知っている。そんな両者の決勝は、まさに1ポイントを巡る攻防となった。

 第1ピリオドは田中がテークダウンを奪って1ポイント奪取。終盤にも加点し、2−0で取った。第2ピリオドは第1ピリオド同様、両者が組み合うものの、タックルに入れない。こういう勝負になると、ミスを犯した者が不利を強いられる。田中が不用意なタックルをつぶされて1ポイントを奪うと、第3ピリオドも鈴木がバックに回って、1ポイント。さらにタックルをつぶしてポイントを重ね、2−0でこのピリオドも制し、初優勝を飾った。

 鈴木は「京子さんが出場してないとはいえ、大きな大会で優勝したことがなかったので、すごくうれしいです。今年の世界選手権には出られないのですが、一生懸命練習して、来年の世界選手権に出場できるように頑張ります」と話した。

 決勝に上がった2人が女王・浜口を脅かす存在になれるのか? 今大会の試合を見る限りでは厳しいかもしれない。だが、2人はこれまでの浜口との対戦ならば第3ピリオドまで戦わせてもらえなかった。この日は第3ピリオドまで戦ったことを自信に持つべきだ。そして女王・浜口に真っ向勝負を挑んでいってほしい。 

(文=三次敏之、撮影=矢吹建夫)



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