【JB杯優勝選手特集】59kg級・正田絢子(網野ク)【2008年4月7日】








 59kg級は、本来の階級であるこの級に返ってきた正田絢子(網野ク)が2年ぶり5度目の優勝。10月に東京で開かれる世界選手権の出場権をかけ、6月に全日本チャンピオンの梶田瑞華(中京女大)とのプレーオフへ挑むことになった。

 正田を追う若手の台頭でトーナメントは活気にあふれた。まずは昨年のアジア・カデット選手権60s級で優勝した佐藤文香(愛知・至学館高)が2回戦で梶田を撃破。学生チャンピオンの中田絵里子(早大)が全日本選手権2位の井上佳子(中京女大)に競り勝てば、その中田を前年王者の山名慧(中京女大)がこれまた小差で退けて決勝に進出する。

 しかし、若手の気迫あふれるファイトをもってしても、女王の存在感には及ばなかった。正田は準決勝で佐藤を豪快にフォールで下すと、決勝では山名に1ピリオドを奪われながら、落ち着いて勝利を引き寄せる。クラス最強をあらためて証明すると、人目も憚らず涙を流した。

 正田にとっては酷な1年だった。前年の大会は北京五輪出場を目指して63kg級に出場し、世界チャンピオンの伊調馨(ALSOK綜合警備保障)に挑戦して夢破れた。昨年12月の天皇杯全日本選手権では五輪出場の可能性が残る72s級に挑戦して周囲を驚かせたが、このビッグチャレンジにも失敗した。

「63kg級から72s級へとオリンピックを目指して失敗して、辞めようと考えたこともあった」。それでも現役を続けようと決意した背景には、周囲の温かい支えがあったのだろう。試合後、正田は心配してくれていた母親に真っ先に電話を入れたという。

 59kg級を制し、次なる目標は世界選手権出場をかけたプレーオフだ。「まだ代表になったわけじゃない。体をしっかり作り直してプレーオフに臨みたい」。慣れ親しんだ世界選手権のマットこそ、失った自信を取り戻す最適の舞台となりそうだ。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)



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