【特集】「中学時代の全国V2は捨てました。それがよかった」…74kg級・北村公平(京都八幡)【2008年3月30日】








 全国高校選抜大会の学校対抗戦で初出場初優勝を飾った京都八幡(京都)から、個人戦の74kg級で1年生(新2年生)の北村公平(左写真)が優勝。全国一に登り詰めたチームの意地を見せた。

 「最高です。団体戦を5試合もやって、さらに個人戦5試合というのは初めてで、しんどかったけど、いい気持ち。『団体優勝しながら個人優勝はだれもいないのか』と思われたくなかった。ボクが取って八幡のメンツを守るんだ、という気持ちでした」。1年生ながらチームを支えようという気持ちは十分で、こうした責任感が1年生王者誕生のエネルギーとなったようだ。

■決勝の第1、2ピリオドとも終盤に逆転勝ち!

 1月の近畿大会を制した3選手のうち、84kg級の選手が3回戦で、66kg級の選手が準決勝で姿を消した。55kg級インターハイ王者の田中幸太郎(今年から60kg級へ)は団体戦での負傷が響き3回戦終了後に無念の棄権。決勝を迎えるにあたり、頼みの綱は北村だけだった。

 決勝の相手は1年上の長谷川公俊(茨城・鹿島学園)。関東選抜大会のチャンピオンであり、準々決勝ではインターハイ3位の松本岬(長崎・島原)を2−0で破って勝ち上がった強豪だ。第1ピリオド開始早々にタックルで場外に出され、ポイントを先制される苦しい展開。

 しかしラスト30秒に相手の足首をすくうような片足タックルで追いつき、1−1のラストポイントで勝つと、第2ピリオドは勢いに乗り、相手を肩の上まで持ち上げるタックル
(右写真)で1点を先制した。ところが、第1ピリオドのタックルのリベンジを受けたかのように足首をすくうタックルでマットに這ってしまい1−1へ。このままならラストポイントで負けてしまう。残り時間は40秒。

 だが、焦りの色は見られない。冷静に相手を追い詰めると、ラスト15秒、右足首へローシングル。動きを制してバックを取り
(左写真)、2−1として勝負を決めた。第1、2ピリオドとも終盤での逆転勝ち。守りに入ろうとする相手からポイントを奪うのは、本物の実力がなければできない芸当。中学時代に2年連続で全国大会を制した実力に偽りはなかった。

■インターハイ優勝へ向け、今回の優勝も“捨てる”!

 「体力がないので、第3ピリオドまでもつれたら負けていたと思います。絶対にこのピリオドで逆転するんだ、という気持ちで思い切ってタックルにいきました」。決して謙そんではない。長谷川のいる鹿島学園は団体戦2回戦敗退であるのに対し、自らは団体戦5試合にフル出場。まして74kg級というのは団体戦の勝負どころとなる階級で、その重圧は相当なはず。精神的にも肉体的にも疲れの度合いは違っていた。

 「個人戦ではずっと気持ちがてんぱっていました」。それだけに、その壁を制した自信は大きいははず。高校ででも2年生でインターハイを制し、2年連続王者となる足場はしっかりと固まった。

 「去年勝てなかったのは、中学で2度全国チャンピオンになったことで、気持ちの中に変なプライドができてしまったからです。でも、中学時代の成績はすべて捨て、この大会に臨みました。それがよかったのだと思います」。その経験からくる教訓は、インターハイへ向けての課題を聞かれた時の答えにも出ていた。「この優勝は脇において、もっと強くなるためにいろんな練習に打ち込みます」。過去の栄光にすがってしまっては、新たな栄光はやってこないと言わんばかりの姿勢は、春夏連覇の予感を十分に感じさせるものだった
(右写真=北村と浅井監督)

 最後に、推薦制度のない府立高校ながら団体と個人1階級を制した京都八幡の強さの秘密を聞いた。「小さい時からやっている仲間同士。信頼関係というか、チームワークがどこにも負けないからだと思います」−。その団結力で、8月に再び八幡旋風を起こすことができるか。

(文・撮影=樋口郁夫)



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