【特集】悔しい銅メダルも「世界チャンピオンとの対戦にワクワクした」…男子グレコ55kg級・長谷川恒平【2008年3月23日】








 北京五輪行きのキップは手に入れられなかった。初めてのシニアの大陸選手権に挑んだ男子グレコローマン55kg級の長谷川恒平(福一漁業)は、準決勝で世界V3のハミド・スーリアン(イラン)と対戦し、力の差を見せ付けられ、第2ピリオドに5点技の大技をくらって完敗(右写真)。自力での五輪出場の可能性が消えた。

 「スーリアンとの対戦は初めて。部屋にポスターを貼ったり、以前写真を撮ってもらったりするなど、自分のアイドルみたいな存在だった」と、現時点では格上の選手と認めている。それでもしり込みすることなく堂々と対戦。「半年後には抜かなければいけないので、今対戦しておいてよかった」と敗戦も前向きにとらえた。

 スーリアンにフォール負けはしたものの、何もできなかったわけではない。第1ピリオドではスタンドで鮮やかな胴タックルでテークダウンを奪った。スタンドは世界レベルといわれている長谷川の実力は本物だった。今後は、「対策はしてきたけど、ビデオを見たのとちょっと違った」と反省するようにグラウンドの攻防が課題になりそうだ。

 イランのほかに五輪出場権を持っているウズベキスタンが反対ブロックの準決勝で負けたため、フリースタイル66s級の池松和彦のように3位に五輪出場権が回ってくることはなくなった。3位決定戦で勝利し、国際大会初出場で表彰台の一角に上がった快挙も、「オリンピックの枠を取れなかったら意味ないですよ」と、喜びは微塵もなく、残ったの悔しさだけだったようだ。

 23歳の長谷川はまだまだ発展途上の選手。世界王者との初対決に負けても、そこが限界ではない。「対戦が決まってワクワクした。豊田さん(雅俊=前全日本王者)と初めて対戦したときと同じ感覚」。アジア選手権代表をもぎとったのは自分の足で豊田超えを果たしから。次は世界チャンピオンを超えるために修行を積んでいく。

 「松本先輩(慎吾=グレコローマン84kg級)が五輪出場を決めて正直うやらましい。早く追いつきたい」。日本レスリング界の双璧、松本慎吾&笹本睦(グレコローマン60kg級)の背中を追うために、五輪行きキップは最終予選が行われる「イタリア発」の「北京行き」と書き換えられた。

(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)



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