【特集】「内容は最悪」と反省だらけの北京前哨戦…女子48kg級・伊調千春【2008年3月21日】








 女子48kg級の伊調千春(ALSOK綜合警備保障)が、新旧世界チャンピオン決戦の決勝戦を制して4年ぶり3度目のアジア一に輝いた(右写真=決勝で2006年世界チャンピオンの任雪層と闘う伊調)。しかし、決勝後の伊調の口からは反省の弁がずらり。「今までの国際大会の中で最低の内容。内容も試合までの気持ちのもっていき方も。金メダルを取ってもうれしくありません」と、喜びの表情はなかった。

 北京五輪前の最後のリミット計量の大会になる(注・世界や大陸選手権以外の国際大会は2kgオーバーの50kgで計量する)。「北京オリンピックにつながる試合をしたい」が大会に臨むテーマだった。

 しかし試合が始まると、当然のことながら「勝ちたい」という気持ちが出てしまい、勝つために慎重な攻撃になってしまったという。「練習でやってきたことが何も出せなかった。このまま北京に臨んでも、同じような試合になると思う。1からやり直すというより、0からやりなおさなければならない」と厳しい言葉が続いた。

 失ったピリオドはないものの、ポイントを取って引き離す試合ができなかったことが反省点なのだろう。「スコアはともかく、本当に最低の内容。気持ちの弱さがあるから練習でやってきたことを試すことができない。弱さを感じることができてよかった。すべてをプラスにつなげたい。気持ちが弱いなんて言っていられない」と言う。

■国際大会7度目の姉妹優勝、そのまとめが北京オリンピック

 約1時間後に行われた63kg級の決勝では、妹・馨が優勝し、姉妹優勝を成し遂げた。国際大会での姉妹優勝は2003年3月のポーランド国際大会以来7度目(ワールドカップの個人順位を除く)。「私たちにとっては、2つの金メダルでひとつの金メダルです」。そのまとめが北京オリンピックにしたい気持ちをずっと持ちながらやってきた。

 2面マットで行われた今大会では、準決勝で2人の試合が同時進行で行われた。「気になりましたよ。馨の相手は去年の世界選手権の決勝の相手でしたし。クリンチでピリオドを落としたとかが見えて、でも絶対に勝ってくれると信じていました」という。

 まさに妹とともに闘った北京五輪前最後のアジア選手権。2人の力の結集が、満足できない内容であったが勝利を呼び寄せることができたのだろう
(左写真=表彰式で日の丸を見つめる伊調)。「北京の前に2人でヨーロッパやアメリカ、カナダに遠征することも計画している」とのこと。1+1が3にも4にもなる姉妹タッグの強さで、いよいよ北京オリンピック・モードに突入する。

(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)



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