【特集】初の表彰台も、目標達成ならず…男子フリー74kg級・長島和幸【2008年3月19日】








 「結果が求められているので、何を言っても仕方がないです」。フリースタイル74s級2回戦で黒星を喫し、北京五輪の出場権を獲得できなかった長島和幸(クリナップ)は、自分に厳しく言い放った。

 全日本選手権を2連覇し、集大成として臨む北京五輪を目指しているが、同階級では、全日本選手権で決勝戦に上がってきたスーパー高校生の高谷惣介(網野高校)に注目が集まり、ナショナルチーム関係者は1、2位で調子がいい方をアジア選手権や五輪出場権トライアルに出場させると断言。アドバンテージがある長島も安泰な状況ではなかった。「自分は危ない状況にあるんだと全日本合宿から意識してやってきました」と、死にもの狂いで練習を積んできた。

 だからこそ結果を出したかったが、2回戦の韓国戦では、第1ピリオドの終盤、「勝負をかけたところだったが、逆に失点してしまった」と場外に出されて失点。第2ピリオドは「相い四つだったので、相手の横につこうと思ったが」(長島)、互いに見あってしまって0−0で終えた。クリンチの防御となり、必死のタックル返しも実らずにテークダウンを奪われた長島は、0−2のストレートで終了。この瞬間、アジア大会で北京五輪出場権獲得の夢は消えた。

 「3位という順位は(普通ならば)いい結果だと思いますが、僕には(五輪出場という)目的があります。アジア1位なれず残念です」。唇をかみ締めながら神妙な面持ちで試合を振り返った。だが、今大会での五輪出場が消えたからといって、敗者復活戦でのモチベーションが下がることはなかった。

 なぜならば、アジア選手権の後に北京五輪の出場権をかけたトライアル大会は2度ある。そのトライアル大会に全日本1位の長島が出られる保証はないのが現状。「残りのトライアルも全部出たい」。そのためにもメダル獲得は必要条件。国際大会の表彰台は代表入りへ大きくアピールとなる。

 長島はそのチャンスを逃さなかった。3位決定戦のカザフスタン戦は長島の闘争心に火がつき、シーソーゲームを制して価値ある入賞を決めた
(右写真=3位決定戦で闘う長島)。「ウズベキスタンやカザフスタンに勝てたことは自信になりました。次につながると思います」と長島が話せば、長島の大学時代の恩師、太田拓弥・早大コーチは「もう十分世界レベルになっている。次は勝てる」と太鼓判を押した。

 目的を果たせなかったため、表彰台で長島は終始厳しい表情だったが、4月のトライアルまでその笑顔はお預けだ。

(文=増渕由気子、写真=矢吹建夫)



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