【特集】つまずきを乗り越えた吉田沙保里から「勇気をもらった」…女子72kg級・浜口京子(ジャパンビバレッジ)【2008年2月12日】







 2月8日から11日にかけて東京・ナショナル・トレーニングセンター(NTC)で行われた全日本女子チームの合宿に、72kg級の浜口京子(ジャパンビバレッジ=左写真)が元気に参加した。昨年9月の世界選手権(アゼルバイジャン・バクー)で、オリンピック種目4階級のうちただ1人だけ五輪出場権を逃した元女王が、名誉を挽回しようと黙々と汗を流し続けた。

 9日の公開練習で報道陣の前に姿を現した浜口の口調は落ち着いていた。「今は、とにかく勝ちたいという気持ちです。モチベーションも徐々に上がってきています。アテネ・オリンピックに出場した4人のうち3人が(北京五輪出場を)決めているので、私も早く追いつきたいと思う」。

 世界選手権では、国際レスリング連盟(FILA)の審判委員長が「誤審」と断言した敗北もあって、北京五輪へのキップを手にすることはできなかった。以後、メディアへの露出をできるだけ控えた。五輪出場権のかかるアジア選手権(3月18〜23日=女子は3月20日、韓国・済州島)にピークを持っていくため、1月に中国・太原で行われたワールドカップも辞退し、集中して準備を進めてきた。「世界選手権が終わってから心身ともに強くなったと思う。レスリングもだんだんわかってきた」。この5カ月間で、失われた自信はある程度のところまで回復した。

 その浜口が出場しなかったワールドカップで、五輪や世界選手権を含めて国内外119連勝中だった55kg級の吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)が敗れるという衝撃的なニュースが飛び込んできた。日本で応援していた浜口にとってもショッキングな出来事だった。「沙保ちゃんとは日本に帰ってきてからメールをして、お互いにがんばろうよと励まし合いました。今回の合宿で、沙保ちゃんが(ショックを克服して)がんばっているのを見て、勇気をもらいました」。大きな挫折にめげず明るく練習に励む吉田の姿は浜口に大きな勇気を与えた。

 北京五輪で金メダル獲得を目指す浜口だが、現在の当面の目標は、言うまでもなくアジア選手権での勝利だ。練習ではコーチ陣と念入りに技の確認を繰り返す浜口の姿が目を引いた
(右写真:金浜良コーチ=右=から技術指導を受ける浜口)。「今回の合宿では、アジア選手権で通用する技を確認しています。具体的にですか? それは秘密です」。ニコリという笑顔とは裏腹に、心は戦闘モードに突入しているのだろう。

 「とにかく日常の生活から気を抜かず、気を引き締めてがんばりたい」。この試練を乗り越えれば、アスリートとしてひとまわり大きくなれるはずだ。金メダルを逃したアテネ五輪から早くも3年半が経過した。浜口の闘いはいよいよ正念場を迎えようとしている。

(文・撮影=渋谷淳)



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