【特集】44年ぶりのマットで優勝!…高橋登さん(日大OB)【2008年1月22日】






 全日本マスターズ選手権で、両者合わせて150歳の闘いとなった68歳の高橋登さん(東京都)と大会最高齢の82歳、米盛勝義さん(鹿児島県)の一戦(右写真=赤が高橋さん)を制したのは日大出身の高橋さんだった。

 試合は第1ピリオドを高橋さんが先制すると、第2ピリオドを米盛さんが奪え返し、迎えた最終ピリオドは両者ポイントなし。延長戦となり、コイントスで攻撃権は米盛さんへ。大ピンチを迎えた高橋さんは、スルリとバックに回って勝利をさらい、「米盛さんは力が強くて筋力もあった。私が勝てたのは実力ではなく、ただ若かったというだけです」と豪快に笑った。

 高橋さん
(左写真)は北海道・旭川商高から日大に進学。特筆するような実績はなかったというが、同じく旭川商高の後輩、吉田義勝氏(東京五輪フリースタイル・フライ級金メダリスト=現全日本マスターズ連盟理事長)と一緒に汗を流した。現役引退後、レスリングと再びかかわるようになったのは3年前。「練馬ジュニアレスリング谷原くらぶ」を立ち上げ、子供たちの指導を始めた。

 子供たちに大会出場を勧められたという高橋さんは「みんなに出ろ出ろと言われまして、恥を忍んで出場しました。マットで試合をするのは44年ぶり。いやあ、出てみてよかったですね」と教え子たちに感謝した。

 ジュニアの指導者として目指すのは、もちろんレスリングのさらなる普及だ。「チビッ子から高齢者まで楽しめるのがレスリング。少しでも多くの人にレスリングを楽しんでもらえるように、これからもがんばりたい」。68歳の現役レスラーは元気一杯だった。

 DivisionCの60kg以下級をを制した51歳の朝倉利夫さん
(右写真)は、過去に出場した4大会すべてで優勝している。今大会の決勝では、1972年ミュンヘン五輪グレコローマン68kg級5位入賞の田上高さん(鹿児島県在住=日体大OB)とのドリームマッチが実現するはずだったが、田上さんが準決勝でひじを痛めてしまったために決勝をやむなく棄権。「田上さんには学生時代に指導してもらったことがあるんですよ。できれば試合をしたかったですね」と少し残念そうだった。

 国士舘大で学生を指導している朝倉さんもレスリングの発展を願う一人だ。これからレスリングを始めようという大人に送るアドバイスを求めると「首を鍛えるなど、やはり最低限の基礎体力は必要です。まずは子どもや女子選手と一緒に始めるのがいいでしょう。くれぐれも大学生とはやらないでください(笑)」と教えてくれた。

 大会を終えた吉田理事長は「今回からフレッシュマンの部を立ち上げ、大人になってからレスリングを始めた選手でも参加できるような体制を整えた。レスリングが生涯スポーツとして広がるよう、これからもマスターズを進化させたい」と抱負を語っていた。

(文・撮影=渋谷淳)



《iモード=前ページへ戻る》

《前ページへ戻る》