【世界選手権特集】51kg級史上最強を目指して燃える…坂本日登美

sakamoto hitomi

6度目の世界一を目指す51kg級の坂本日登美(自衛隊)。4年前のアテネ五輪の時は、そのマットに立つことができず「悔しい気持ちでいっぱいだった」そうだが、北京五輪では、なぜかそうした気持ちはなかったという。「日本選手を応援していました。沙保里(吉田)が優勝した時は本当にうれしく、『おめでとう』という気持ちでした。悔しいという気持ちは全くありませんでした」。
 悔しさは、55kg級で夢破れたあと、「私は51kg級で世界一を目指すんだ」と決意した時に完全に消えてくれたという。自分の階級で世界一を目指す気持ちがしっかりと固まっている何よりの証拠だろう。
   それは、「6度目の優勝」に水を向けた時にはっきりと伝わってきた。五輪と合わせた世界一では吉田と伊調馨が「7度」を記録したが、世界選手権だけに限れば、6度の優勝は日本選手では浦野弥生だけが達成している記録だ。五輪には出場していなくとも、日本の女子レスリング史にさん然と輝く記録になる。しかし「優勝回数は気にならないです。51kg級で負けたくない、という気持ちの方が強いです」。


sakamoto hitomi

 世界選手権(すべて51kg級)で23戦全勝。51kg級での国際大会は56連勝中。51kg級での闘いに誇りを持っていればこそ、他人の栄光をうらやむことはない。後世まで残るこのすばらしい記録に、黒星をつけてほしくはない。
 「全日本合宿が始まり、いよいよだな、という気持ちです」。地元開催ということで、これまで出場したどの世界選手権よりも多くの応援が予想される。「雰囲気にのまれないようにしたい。自分の力を信じ、やるだけです」。かつてない緊張感が全身からただよう。
 それは、この大会を最後にして第一線での選手活動にひとまずの区切りをつける決意をしているからかもしれない。「レスリングが好きだから、何らかの形で携わってはいきます。でも、選手活動は今回でひとまずの区切りをつけます。妹(真喜子=48kg級)のサポートもしたいし」。
 2012年ロンドン五輪で51kg級が実施されることになった場合には、それを目指す可能性は否定しなかったが、「これが最後のつもりで闘います」ときっぱり。
 2005年から世界選手権で、1ピリオドも落とさない“完全優勝”を3度続けたのは、吉田と伊調馨も達成できなかったこと。13試合の失点の合計はわずかに3点。パーフェクトとも思える坂本のレスリングは、地元でいよいよ総決算を迎える。