”世界V8”達成! 55kg級・吉田沙保里、休むまもなく12月天皇杯も出場宣言!

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 涙の北京五輪金メダルから2カ月。地元・日本で行われた世界選手権でも55kg級・吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)は頂点に立った。北京五輪直後にロンドン金メダル宣言をしていた吉田は、「ロンドンへの第一歩という気持ちでマットに上がった」と北京の余韻ではなく、完全に4年後を見据えて試合に臨んでいた。

 吉田のモチベーションとなったのは、17年ぶりの日本開催という点だ。「地元開催ということで今までで一番気合が入りました。ものすごい”沙保里コール”が聞こえました」

 観客席を埋め尽くしたファンの声援に加えて、吉田を奮い立たせたことがもう一つ。それは父・栄勝氏が特別コーチとしてセコンドに就いたことだ。「こんなことは(めったに)ないと思う。感謝している」と吉田は、世界選手権6連覇、五輪をあわせると”世界V8”を達成したのだ。
 「地元での世界選手権で金メダルを取れて最高にうれしい」。日本のエースは北京五輪の凱旋試合でファンの期待に応え、MVPも獲得した。

慎重になりすぎた決勝戦

saori  準決勝まですべて1分以内でフォールと理想的な形で勝ち進んだ吉田。「若いジュニアの選手だと思う。ジュニアの力が伸びていると思ったけど、大丈夫だった」と振り返るが、決勝の相手・ラザレワ(ウクライナ)に、吉田は多少の”トラウマ”があった。

 初出場の2002年世界選手権で初対戦。「力がすごく強かったので覚えていた。それで慎重に行ってしまった」。6年前の出来事でも「対戦した55kg級の選手のことはだいたい覚えている」という吉田は、決勝戦の第1ピリオドで必要以上に慎重な動きに。今大会初、第1ピリオドの2分間で勝負を決められなかった。

 「何やっているんだ! タックルに入れ」

 インターバルに戻ると栄和人コーチのゲキが飛んだ。我に返った吉田は第1ピリオドを冷静に見つめ返した。「6年前は確かにすごいパワーだった。でも、今はそうでもない。6年も経って自分にも力がついてる」。

 自信を取り戻した吉田は第2ピリオドを本来の姿で攻めた。タックルからの連続攻撃を仕掛けたところで相手が負傷してしてしまい、5-0とリードを奪ったところでラザレワにドクターストップ。そのときの時計は53秒を刻み、慎重に行った決勝の第1ピリオドを除けば、全試合”秒殺”で試合を終わらせる驚異的な強さだった。

前人未到の女性で五輪三連覇を目指して

saori    そもそも、五輪直後の開催で出場選手のレベルなどを考えると、吉田に負ける要素は一つもなかった。だが、五輪を連覇し国民的ヒロインとなった吉田は、取材や挨拶まわりの過密スケジュールで「練習できない日々」が続く。そこから世界選手権モードに切り替えたのは9月7日から始まった全日本合宿だ。

 「急きょ入れた合宿で日本チームが団結できた。だから全員がメダルを取れた」とチームでまとまったことが自分とチームの勝利に繋がったと分析した。

 2008年のビックマッチを完璧にこなした吉田。これでしばらく休息モードかと思いきや、なんと12月の全日本選手権に「はい、出ます」と出場宣言。しかも「できるだけ追い込んで、気合を入れたい」と100パーセントの気持ちで出場することをキッパリ言い放ったのだ。

 「レスリングができるのは今しかない。ロンドンが本当に(現役)最後かもしれない。ここからの4年、一生懸命やっていれば、あっという間にやってくると思う。下に追い越されないようにしないと」

 前人未到の女性での五輪3連覇という記録に吉田は今からやる気満々。パーフェクトレスラー・吉田がロンドン五輪までターボ全開で突っ走る!

(文/増渕由気子 撮影/矢吹健夫)



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