【全日本選手権優勝選手】男子フリースタイル66kg級・池松和彦(福岡大助)【2009年12月24日】

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)



 前年度覇者で2009年世界選手権銅メダリストの米満達弘(自衛隊)がけがで出場を辞退した男子フリースタイル66kg級で優勝をさらったのは、2004年アテネ・08年北京両五輪に出場しているベテランの池松和彦(福岡大助)だった。

 試合はベテランの味を存分に発揮した。初戦で2006年アジア大会銀メダリストの小島豪臣(K−POWERS)を退けると、2回戦をフォール勝ち。準決勝では学生王者の森川一樹(山梨学院大)と対戦。第1ピリオドを先制しながら、第2ピリオドを失った池松は、練習不足からか、あきらかにスタミナを消耗。若い森川がそのまま押し切るかに思われたが、五輪の大舞台を2度踏んでいるキャリアはさすがだ。森川の一瞬のスキを突いて両脚を取り、仰向けに倒して一気にフォール勝ちしてみせた。

 決勝でも光ったのは池松の試合巧者ぶり。スタミナのない池松は「準決勝から手首がいうことをきかない状態だった」と言いながら、緩急をうまく織り交ぜて佐藤吏(ALSOK綜合警備保障)に決定技を許さない。結局、最終ピリオドまで試合をもつれさせ、1ポイントを上げて逃げ切るという渋い内容で、2年ぶり4度目の優勝を達成した。

 試合後に開口一番、「きつかった」と言うように、数年前と比べて体力不足は明らかだった。というのも、池松は昨年10月から福岡大のスポーツ科学部に勤務。教員として忙しい毎日を送っているためだ。「明後日からバスケットの授業が始まります(笑)。昔の練習量を10とすれば、今は6くらいでしょう」。それでも優勝できたのは「4月に生まれた長男が初めて試合を見にきたから」だそうで、「名前は輝八(きはち)。8時8分に生まれたからなんですよ」と集まった報道陣を笑わせた。

 教員との両立は、トップ選手として最高の環境とは言えないかもしれない。ただ、池松にしてみれば自分で選んだ道である。「大学で働くようになって、いろいろな角度からレスリングを見られるようになった。今は勝ち負けというよりもチャレンジ。チャレンジを続けていけば、ロンドン(五輪)もあるかもしれない」。今後も自分のペースを崩さず、レスリングを続けていくつもりだ。


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