【全日本選手権優勝選手】女子72kg級・浜口京子(ジャパンビバレッジ)【2009年12月24日】

(文=山口毅、撮影=矢吹建夫)



 女王・浜口京子(72kg級=ジャパンビバレッジ)が2年ぶりに天皇杯全日本選手権に帰ってきた。と同時に、カムバックを自らの優勝で華を添えた。

 昨年の北京五輪後に「ひと区切りつけようと思っていた」という浜口だが、2か月後の世界選手権が東京での開催ということもあり、五輪代表選手の責任感として出場した。結果は五輪と同じ銅メダルだったが、浜口にとっては「再スタートが切れた」。肉体と精神的なケアのため、しばらく試合出場を見合わせていたものの、今年8月の「ポーランド・オープン」で復帰を果たした。

 しかし、かつての同僚である山本聖子が復帰優勝を飾ったのとは対照的に、浜口は5位に終わった。「メダルも獲れないようなら引退する」。浜口は今回こそ現役生活にピリオドを打つ決心をしたが、父・アニマル浜口氏や練習仲間の激励もあって、全日本選手権に出場して結果を残そうと気持ちを切り替えた。

 ところが、練習をやり込んでいた時期にアクシデントが浜口を襲う。スパーリング相手のヒザが左足に乗っかってしまったのだ。激痛が走った。左足の親指は骨折していた。医師はこの先に目標があるのなら、今回の全日本選手権は見送るべきだとストップをかけた。浜口はこの大会のために一緒に練習してきた仲間やコーチ、父、そして自分の目標を遂行するために強行出場を決めた。

 初戦となる準決勝の鈴木博恵(立命館大)戦では、なかなかポイントが奪えなかったものの、第1ピリオド終了10秒前に場外へ押し出して1−0とし、このピリオドを先取。第2ピリオドは終了間際にバックに回られて1点を失い、ピリオドスコア1−1とされてしまった。第3ピリオドは鈴木のタックルをかわしてバックにも回って2ポイント獲得、結局、ピリオドスコア2−1で浜口が制した。

 決勝の相手の井上佳子(中京女大)は67s級から階級を上げて臨んできた。準決勝は第3ピリオドまでもつれた浜口とは対照的に、圧巻の秒殺フォールで決勝へと勝ち上がった。

 迎えた決勝戦。左足の親指が痛むのか、いつもの浜口の突進力が見られない。第1ピリオドはボールピックアップで優先権を得て、バックに回って1−0で制したが、第2ピリオドは井上にバックに回られ、準決勝に続いてこのピリオドを落としてしまった。しかし第3ピリオド、終盤に井上のタックルを切ってバックに回り、2年ぶり13度目の優勝を飾った。

 「このレスリングのマットに立てていることが奇跡です」という試合直後の浜口のコメントは左足の親指の骨折であったことをインタビュースペースで明かした。「レスリングが大好きなので、ロンドンオリンピックを目指します」。 この浜口の力強いコメントを誰もが信じている。


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