2009年世界選手権代表の長島和幸（クリナップ）が実力を発揮。全４試合で無失点という安定した試合内容で４連覇を達成した。準決勝で昨年の全日本選抜選手権王者の萱森浩輝（新潟・新潟県央工高教）を振り切って決勝に進出。ファイナルは、今年の国体王者の鈴木崇之（警視庁）との接戦を制して勢いに乗る高橋龍太（自衛隊）が対戦相手となった。普段は慎重な立ち上がりの多い長島が、決勝では序盤から仕掛けた。「作戦通りだった」という目の覚めるようなタックルをさく裂させると、すかさずローリングを決めてあっという間にリードを広げる。第２ピリオドは第１ピリオドのようにはいかなかったが、危ない場面はまったくなし。勝利の瞬間、ともに練習を積む母校、早大の後輩が陣取るスタンドに軽く手を上げ、喜びを分かち合った。
４連覇を成功させたとはいえ、喜んでばかりもいられないのが今の長島の立場だろう。国内では頭一つ抜けつつある74㎏級の第一人者も、初出場した今年の世界選手権では、各国の強豪に自分のレスリングをさせてもらえず、予選敗退という屈辱を味わった。
「自分は元々カウンターを得意のパターンにしているけど、世界の舞台では、受けてばかりでは勝てないと実感した。自分から取りに行く技がないと、世界では通用しない」。本来の持ち味であるカウンター攻撃を生かすためにも、アグレッシブな仕掛けが必要ということだろう。決勝で見せた鋭いタックルからの連続攻撃は、世界選手権の反省をしっかりと生かした攻撃だった。
来年は当然、全日本選抜選手権に勝利し、再び世界選手権の舞台で勝負することが最大の目標となる。「国内でダントツの力を見せて勝たないと、世界では勝てない。海外で勝つことを意識して、今後もトレーニングをしていきたい」。ただ勝つだけではダメ。世界でリベンジを目指す長島の意識が高まっている。