【全日本選手権優勝選手】男子フリースタイル120kg級・下中隆広(国士館大大学院)【2009年12月22日】

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)



 9月の新潟国体で優勝した下中隆広(国士館大大学院)が、2009年世界選手権代表で連覇を目指した荒木田進謙(専大)を下し、うれしい初優勝。「前から優勝したかった大会。大学の先生をはじめ、いろいろな人に助けてもらった」と真っ先に感謝の言葉を口にした。

 下中は決勝まで順調に勝ち上がり、第一人者の荒木田と対戦した。国体の準決勝で勝っている相手とはいえ、荒木田は昨年世界ジュニア選手権2位、今年はアジア選手権3位の実力者。苦戦も予想される中、冷静な闘いぶりが勝利を呼び込んだ。

 第1ピリオド、先に仕掛けたのはアジア選手権銅メダリストだった。荒木田がグッと前に出ると、下中はたまらず後退。しかし「ああいう展開になれば出そうと思っていた」との言葉通り、相手をうまくいなしながら投げを放って先制点を挙げる。続く場面では、またもや相手の力をうまく利用した投げ技を決めてポイントを奪取した。

 アクシデントが発生したのはこのピリオドの最後の場面。やや強引にタックルを放った荒木田が右足首を負傷してしまった。ドクターチェックを受け、棄権の雰囲気も漂う中、前王者は足を引きずりながら第2ピリオドに出場。片ひざをつきながら戦う気迫は見事だったが、下中の勢いを止められるはずもなかった。

 「荒木田君は強い選手。今日はたまたま彼がけがをしただけ」。悲願の初優勝と遂げた下中がどこまでも謙虚なのは、学生時代にけがに泣かされ、苦労を積んだからだろう。「ずっとけがで成績を残せなかったのに、コーチや監督が大学院でレスリングを続けさせてくれた。何とか恩返しがしたかった」。

 重量級の同期、グレコローマン84s級の斎川哲克(両毛ヤクルト販売)や同96kg級の北村克哉(FEG)が先に全日本タイトルを取ったことも大きな刺激になったという。「照れくさいから言葉にはしないけど、同期の仲間にもたくさん助けてもらった。本当にみんなに感謝です」。殊勲の優勝者はどこまでも謙虚だった。


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