【特集】江藤紀友(自衛隊)が1階級上の74kg級でぶっちぎりの優勝! 次は全日本選手権【2009年11月23日】

(文=増渕由気子)



 天皇杯全日本選手権まであと1ヶ月を切った。その大会を見据えた男子グレコローマン66kg級の江藤紀友(自衛隊)が、全国社会人オープン選手権に一つ上の74s級に出場し、ぶっちぎりの強さで優勝を飾った。

 初戦(2回戦)から決勝までの3試合を無失点。全6ピリオド中5ピリオドをテクニカルフォールで仕留め、「得意技のローリングがさえた」と快勝に笑顔も。出場権を得ている66s級での出場(出場権利は昨年3位)に弾みをつけた。この笑顔は“やっと天皇杯へのスタートラインに立てる”という決意の表れだ。

■飛躍の年となる2009年だったが…

 昨年の大分国体でシニア大会初優勝を飾り、飛躍の年と腰を据えて挑んだ今シーズンは、予想外にボロボロだった。6月の全日本選抜選手権では梅野貴裕(徳山大)に1−2でまさかの初戦(2回戦)敗退。9月の新潟国体では第1シードの面子もむなしく、今季から警視庁に入庁した成瀬一彦(2007年全日本大学グレコローマン選手権2位)にストレートで敗れてしまった。

 全日本選手権まであと1ヶ月ということを考えると、今大会への出場は、けがの危険などマイナス面もある。その中で、江藤があえてマットに立ったのは理由があった。「天皇杯に向けて自信をつけたかったんです」。今季出場した試合は、それぞれ1試合しかこなせず、汗もかくことなく終えてしまった。勝ち上がる試合感を取り戻すために、リスクを背負ってマットに立った。

 体に負担をかけないため減量のない74s級に挑戦。「やはり1階級上はしんどい。どんな選手とやっても大きくてパワーを感じた」と話したが、それを感じさせない内容で圧勝(左写真=決勝も積極的に攻めた江藤)。社会人になって初めての優秀選手賞にも輝いた。「(個人賞は)学生時代以来のこと。正直、うれしいです」と、素直に笑顔がこぼれた。

■避けられない同門対決! 急成長の拓大の後輩も要注意

 江藤は福岡・三井高3年生の時の2001年に全日本選手権に初出場し、大学生を破って1勝をマークした経歴を持つ。拓大時代の2005年には学生二冠王者となり、同世代のスターだった。「あのころは、何も怖くなかった」と振り返るが、社会人になってからは、いまひとつ勝ち切れていない現実がある。

 グレコローマン66s級は、時には表彰台を独占してしまうほど自衛隊の“専売特許”の階級と言ってもいい。同じ所属は仲間でもあり、最大のライバル。「全日本王者の藤村(義)さんは先輩、清水(博之)は後輩。ともにプライベートでは仲がいいです」と話すものの、練習では常にピリピリモードの毎日が続いている。2人に勝つために、「頭を使っているつもりだが、何か空回りしてしまう」と表情を曇らせた。

 年齢も26歳となり、“若手”からの脱却も果たさなければならない。自衛隊の選手の中には、ロンドン五輪を目指すか、現役を退くかの選択を迫られている選手もいる。「僕は、ロンドン五輪まで闘いたい。(続けるためにも)全日本選手権は勝ちにいかなきゃいけないんです」と固い決意を見せた。

 身近なライバル、そして学生二冠王者で急成長を遂げる大学の後輩、岡本佑士(拓大)らを抑えて、再びチャンピオンの肩書きを取り戻すことはできるか。「今回勝てば、またあの頃に戻れそうな気がする」と江藤。”再ブレーク”なるか(右写真=2005年全日本学生選手権で快勝した江藤)


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