日体大レスリング部に無期限の対外活動禁止…大学が処分【2009年10月16日】



 日本体育大学は10月15日、都内の大学内で記者会見し、同大学レスリング部の藤本英男部長と安達巧監督の役職を解任、レスリング部に対外試合を含む対外活動無期限禁止の処分を発表した。8月12日深夜に1年生部員(18)が横浜市青葉区で帰宅途中の女性会社員を襲い、9月28日に強姦(ごうかん)致傷で逮捕された事件に対する処分。同部員は容疑を認めており、現在も拘留中。退学処分となった。

 会見には日体大の塔野武夫理事長、落合卓四郎学長、小林節不祥事再発防止対策委員長(慶大教授、弁護士)らが出席。9月4日にも同大学の教授が群馬県で女湯をのぞき見して逮捕されており(実質的な起訴猶予へ)、会見の冒頭で一連の不祥事に対して深く頭を下げて謝意を表明。理事長、学長、副学長、学部長、短大部長に減給処分(自主返納)を課し、経営トップの責任を明確にした。落合学長は当初辞表を提出したが慰留され、再発防止に全力を尽くすことになったという。

 レスリング部に対する処分の「無期限」に関して、小林委員長は「本当に無期限」と話し、ほとぼりが冷めるのを待って短期間で解除するための方便ではないことを強調。「年度の変わり目に状況を見て判断したい。したがって、最低でも来年3月まで処分がとけることはない。私は3月で終わりにするつもりはない」と話したが、「廃部ではない」とも話した。

 藤本部長、安達監督に関しては部長、監督の役職を解任するのであり、教授、職員としての身分は取り上げない。大学教員でもある松本慎吾コーチは、部内では「コーチ」となっているが、大学の役職に「コーチ」という役職はないため、解任といった処置ができないだけであり、「学生の指導はやめていただく」という。他に2人のコーチがいたが、いずれも学外の会社等に所属してボランティアで指導してくれていたものなので処分の対象外。当面は学友会運動部統括部長の関根義雄教授が監督代行を務める。

 部員の自主練習までは妨げず、他大学の練習への個人参加も自主練習と判断するとしたが、個人参加であってもあらゆる公式大会への出場は禁止。恒常的に練習に参加していたOB選手、および現在4年生で来年3月に卒業する選手のその後については、「学生の身分でない者へ処分は及ばない」とし、大会参加は各所属と日本レスリング協会の判断に任せるという。

 現在高校3年生の選手で推薦入学の内定を出しているケースもあるが、それらの選手にはレスリング部員として入学を認める一方、落合学長は「今回の事件には全く関係がない。この処分が及ばないよう、日本レスリング協会にお願いしたい」と話した。

 報道陣からは「集団ではなく、全くの個人の犯罪に対し、ここまできつい連帯責任はいかがなものか」「不祥事に対して、当該クラブのトップが責任をとらされたことはあったが、大学のトップまでが責任を取るのは異例だが…」との質問が出たが、今年3月に陸上部の男子選手が大麻取締法違反で逮捕(起訴猶予)されるなど不祥事続きであることや、被害女性に一生消えない深い傷を負わせたことを指摘し、小林委員長は「連帯責任ということで事の重大性を受け止めてほしい。スポーツは1人でやっているものではない」と話した。

 日体大は同日、東日本学生レスリング連盟と日本レスリング協会に対して処分を報告した。東日本学生連盟は今月17日に臨時理事会を開催して連盟としての処分を決める。それを受けて日本協会も処分する。

 逮捕された当時は新潟市で国民体育大会が開催されていたが、日体大は「大学の代表ではなく、各県の代表として参加している」として出場辞退は求めなかった。その後はレスリング部の練習を停止しており、同部は処分が出る前に行われた全日本大学グレコローマン選手権(10月13〜14日、東京・駒沢体育館)への出場を辞退していた。


《iモード=前ページへ戻る》
《トップページへ戻る》
《ニュース一覧へ戻る》
《ニュース一覧(2008年以前)へ戻る》