【特集】“中大のツインタワー”74kg級の中井伸一、84kg級の天野雅之がそろって優勝【2009年10月15日】

(文・撮影=増渕由気子)



 今季、学生界にとっての団体戦3大会目となる全日本大学グレコローマン選手権が10月13〜14日、東京・駒沢体育館で行われた。団体(大学対抗得点)優勝は3階級で優勝した拓大が勝って今季2冠目。2位は2階級で優勝した中大が入った。曽根田昌弘監督は「大会史上最高の成績ですよ」の初の快挙を喜んだ。

 中大の快進撃を支えたのが、74kg級で優勝した中井伸一と84kg級でチャンピオンになった天野雅之の3年生エースだ(右写真=左が中井、右が天野)。中井は身長が74kg級にも関わらず188cm、天野も182cmと、2人がそろってならぶと存在感バッチリだ。

 中大は2003年のこの大会で2階級を制したのを最後に、大学王者は誕生していなかった。苦しい時期に救世主として入学してきたのが、この“ツインタワー”の二人だ。

■インターハイチャンピオンの父の背中を追って中大へ…中井伸一

 74kg級で頂点を極めた中井は、1975年インターハイ56kg級でチャンピオンになった父を持つ二世レスラー。父・孝次さんの影響でキッズ時代から競技に取り組み、全国中学生大会の38kg級で優勝している。当時は軽量級だったが、高校3年間で身長が20cm以上も伸びた。体格的に96kg級あたりがベストと思い、体重増加に取り組んだが、「太れない体質だった。現在も減量は4kgほどしかない」と、188cmながら74kg級をキープ。常に頭一つ小さい選手たちと戦うことを強いられている。

 それが中井の武器に繋がっている。「僕は小さい選手とやるのはなれている。けれど、相手は僕みたいな選手と対戦するのはやりにくいと思う」。徐々に表彰台の常連となり、優勝候補の一角を占めるまで成長した。

 タックルが得意で、専門はフリースタイルだが、今大会のグレコローマンでは長い足を使い、リフトしてしまえばどんな選手でも足をマットから浮かせることができる。決勝戦では、持ち上げてからのローリングをズバっと決めて優勝を勝ち取った(左写真)

 中大は学生主体の練習体系をとっており、強くなるためには自意識の向上が必須となる。学生同士で技の研究はしあうが、それだけだとバリエーションに限界がある。「父が海外のDVDを見るのが好きで、“ファザエフ”というガッツレンチの一種を紹介され、使っていたことがある」と、手足の長さを生かした技も積極的に取り入れているようだ。

■野球からレスリングに転身、大学3年で国体と学生王者に輝いた天野雅之

 天野は中学までは野球少年だった。ラグビーの強豪高で知られる東福岡高に通ったが、進学クラスに所属したため、野球部の活動が困難に。「同じ敷地内でできる部活がないかな」と探したところ、レスリングに出会った。

 182cmの長身にふさわしい鋼の肉体を持つ天野は、脱力レスリングを得意とする中井とは真逆のパワー系レスラー。「2人で足して2で割ったらちょうどいいレスリングができるかもね」とお互い苦笑するほど対照的だ。

 昨年の東日本学生春季新人戦では両スタイル84kg級で優勝。最優秀選手に選ばれ、その後もコンスタントに表彰台にのぼってきた。9月の新潟国体ではグレコローマン84kg級で初優勝。学生タイトルよりも先にシニアのビッグタイトルを手に入れた(右写真=決勝をフォールで勝った天野)

 今大会も、学生王者の岡太一(拓大)を第2ピリオドにクラッチから投げて鮮やかなフォールを決めた。学生で頂点を極めた天野は、「斎川さん(哲克=世界選手権代表)に挑戦したい」と、12月の全日本選手権を見据えた。


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