【特集】厳しい組み合わせだったが「負けは負けです」…男子グレコローマン74kg級・鶴巻宰(自衛隊)【2009年9月28日】

(文=保高幸子、撮影=矢吹建夫)



 くじ運が悪かった。北京五輪王者のマヌカー・クビルクベリア(グルジア)と初戦で当った74kg級の鶴巻宰(自衛隊)。日本陣営に暗雲が立ちこめた。

 しかし、2006年のニコラ・ペトロフ国際大会(ブルガリア)で勝った相手。気負わず、背負い投げを決めて撃破した。ただ、そこは層の厚い74kg級。3回戦も油断はできない相手だった。2007年世界選手権(アゼルバイジャン)で勝ってはいるものの、トータルでは1勝2敗のエフゲニー・ポポフ(ロシア)。グラウンドで第1ピリオドを取りながらの悔しい敗戦。鶴巻宰の世界選手権は今年も2試合で終了した。

 「すみません」。上位入賞が期待されたにも関わらず敗者復活にもまわれず、鶴巻宰(自衛隊)はそう言うしか無かった。勝った初戦も負けた3回戦も、グラウンドでの課題が見つかった。グルジア戦については「守り切ったけど、たまたまです。30秒で3回もリフトにかかってはだめ。ちゃんと返して勝ちたかった」と反省。

 3回戦でもローリングを決められたこと、自分が決められなかったことを改めて自分の弱点と確認できた。「第1ピリオドで勝った、と思ってしまい、油断しました。まだまだですね。スタンドはよくなったんですけど…」

 鶴巻は「(違う抽選結果だったらということは)考えません。負けは負けです」と言い訳しない。そしてもうすぐ生まれる赤ちゃんのことをきかれると本音が出た。「メダルもって帰れなくて悔いが残ります」

 しかし、世界でもっとも層の厚い74kg級で、 “本番”の世界選手権の舞台で五輪王者に勝ったことに関しては誰も文句はない。佐藤満強化委員長(専大教)も「グルジアに勝ったことは収穫」と認めている。グラウンドの強化に関しても、パーテール・ポジションからの攻防に関しては「海外と日本ではタイミングが違う。海外経験の必要性を感じた」という。

 今大会で課題と攻略法の両方がみつかったのだ。この冬から遠征と合宿を重ねていけば、世界の頂に立つことは夢ではなくなるだろう。


《iモード=前ページへ戻る》
《トップページへ戻る》
《ニュース一覧へ戻る》
《ニュース一覧(2008年以前)へ戻る》