【特集】メダルに手が届かなかったが、強豪ロシアを破る!…男子グレコローマン55kg級・長谷川恒平(福一漁業)【2009年9月26日】

(文=保高幸子、撮影=矢吹建夫)



 「メダルを取る気持ちはあったんです」という言葉は、偽りでも強がりでもない。新生グレコローマンチームの中で、55kg級の長谷川恒平(福一漁業)はメダルの可能性大と誰もが思っていた。1回戦のニコラ・カラドナ(イタリア)戦を難なく勝ち、2回戦では欧州選手権3位で、初戦で昨年の世界ジュニア王者のブルガリア選手に圧倒したベッカン・マンキエフ(ロシア)の怒濤の攻撃をうまくかわしてポイントを重ね、競り勝った(右写真)

 厳しいと思われた組み合わせの中で最大の強敵と思われた選手を破り、快進撃が続くと思われた。しかし3回戦、ヴァージル・ムンタヌ(ルーマニア)の固い守りを打ち破れず、何もできないまま終わて長谷川の世界初挑戦は幕を閉じた。

 「(ルーマニア戦は)何もできませんでした…。グラウンドの技をもうひとつ身につけたいです」と決定力不足を実感した長谷川。スタンドの攻防では、組み手でずっと指を握られて中に入れなかったため、何もできなかった。

 しかしロシアに勝ったことには「収穫です。強いとは思ったけど、名前に負けず自分のスタイルで試合できました」と胸を張る。収穫は他にもある。日本では経験できないルーマニアやロシアのグレコローマン…、すなわち飛び込んだりして瞬時に前に出てくる攻撃を体験できたこと。また、パーテールポジションからの攻撃にも日本と海外の違いを学んだ。「日本ではほとんどノーマル・パーテールなんですが、世界ではクロス・ボディ・ロックが増えてきましたね。世界を視野に入れて、クロス・ボディ・ロックを取り入れた練習をしたいです」。7月のゴールデンGP大会ではあまり感じられなかったというから、世界選手権に出たからこその収穫と言える。

 「今回の世界選手権は2012年ロンドン五輪へむけてのスタートだと思っている」と事前に語った長谷川。それならば、今回の長谷川の世界初挑戦は大成功だったといえるのではないだろうか。「優勝するには1日5試合勝つことが必要。今のままでは…。体力をつけます!」。長谷川には、すでに自分が優勝するイメージができている。来年はそのイメージ通り、日の丸を高いところへ掲げてくれるだろう。


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