【特集】世界選手権へかける(20)…男子グレコローマン55kg級・長谷川恒平(福一漁業)【2009年9月16日】

(文=増渕由気子)



 今年の世界選手権で、新生ジャパンの中で最もメダルが期待されている男子選手、それがグレコローマン55kg級の長谷川恒平(福一漁業=左写真)だ。

 2007年12月の全日本選手権で、2004年アテネ五輪代表の豊田雅俊や元全日本王者の平井進悟を倒して初優勝。世代交代を成し遂げるが、海外経験の浅さが響いて、北京五輪予選となる翌年3月のアジア選手権(韓国)で3位、4月の五輪最終予選第1戦(イタリア)は初戦敗退に終わり、北京五輪出場はならなかった。

 北京五輪は同スタイル60kg級の笹本睦(ALSOK綜合警備保障)の練習パートナーとして同行したが、出場できない悔しさを十分に味わった。それが“いい薬”となり、今年の快進撃につながっている。

■強豪がそろう今年の世界選手権グレコローマン55kg級

 2月のニコラ・ペトロフ国際大会(ブルガリア)での海外初優勝を皮切りに、3月のハンガリー・カップ、5月のアジア選手権(タイ)、7月のゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)と、国際大会を4大会連続優勝。

 ゴールデンGP決勝大会には北京五輪銀メダルのロブサン・バイラモフ(アゼルバイジャン)が出場しており、きん差で撃破。五輪金メダリストのナジル・マンキエフ(ロシア)が主要大会に出ていないが、ランキング制度があるなら“今シーズン1位”の実力だ(右写真:今年も出てくる北京五輪金のマンキエフ=左=と銀バイラモフ)

 全日本チームではエースの呼び声が高く、マスコミの注目度も上がってきた。注目されようが、長谷川のスタンスは変わらなかった。「五輪で勝つことが目標。だから今大会は全力を尽くすだけです。ハミド・スーリアン(イラン)のように、3年連続でチャンピオンになっても五輪で負けてしまっては意味がないから」と、今回の世界選手権は通過点という姿勢で臨む。

 世界選手権のエントリー状況が明らかになっており、グレコローマン55kg級は北京五輪の1、2位、2人いる3位の一人、そして世界V3のスーリアンらの出場が濃厚となった。5月にアジア選手権を制した時、「本当の上位と対戦して優勝したわけじゃないから」と金メダルの価値を冷静に分析した長谷川だったが、今大会は、“本当の世界”と対戦が実現しそう。

■母校の激励会で“禁句”を解禁! 「ひとつでもいい色のメダルを持って帰る」

 社会人3年目。バックアップを受ける福一漁業では総務部に配属されている。6月の全日本選抜選手権では明治乳業杯を授与され、その賜杯は本社の受付に常設してあるそうだ。「仕事は企業のイメージアップです。勝つことで恩返しができる」と長谷川は意気込みを見せる。

 長谷川に大きな期待をかけているのは、母校の青山学院大も同じ。同大学から世界選手権に代表を出すのは初めてのこと。9月5日にはレスリング部OB会主催にる激励会が都内で盛大に行われた。そこには長谷川の5年先輩のOBである新日本プロレスのエース、中邑真輔の姿も(左写真:中邑と肩を組みカレッジソングを歌う長谷川)

 たくさんのOBや後輩たちの応援を受けた長谷川は、これまで1度も口にしなかったフレーズをついに解禁した。「ひとつでもいい色のメダルを持って帰ってこられるように頑張りたい」。堂々のメダル宣言。日本のエースに成長した長谷川のメダルの色はいかに。

長谷川恒平(はせがわ・こうへい)=福一漁業

 1984年11月22日、静岡県生まれ、24歳。静岡・焼津中央高〜青山学院大卒。全国少年選手権4連覇、全国中学生選手権2連覇。焼津中央高時代に2002年のインターハイなど7つの全国タイトルを獲得。

 青学大ではグレコローマンで2003年に世界ジュニア選手権に出場し、2005・06年の全日本学生選手権でも優勝する一方、フリースタイルでも全日本大学選手権3連覇を達成など。

 卒業後はグレコローマンに専念し、2007年全日本社会人選手権優勝。同年の全日本選手権で初優勝を遂げた。2008年アジア選手権で銅メダル獲得と力を伸ばしたが、北京五輪には出場できなかった。2008年の全日本選手権でも2連覇を達成し、2009年はアジア選手権、ゴールデンGP決勝大会などで優勝。164cm。

 ◎長谷川恒平の最近の国際大会成績

 《2007年》

 【デーブ・シュルツ国際大会】(14選手出場)
1回戦  ●[1−2(3-8,4-3,1-1)]Spenser Mango(米国)
敗復戦 ●[不戦敗]Anthony Brooker(米国)

 【ピトラシンスキ国際大会】5位(21選手出場)
1回戦   BYE
2回戦  ○[2−1(1-@,4-1,8-2)]Natig Bagimov(アゼルバイジャン)
3回戦  ○[2−1(0-3,3-0,5-0)]Onur Sensoy(トルコ)
準決勝 ●[0−2(0-5,0-4)]Rovsan, Baizamov(アゼルバイジャン)
三決戦 ●[0−2(2-3,2-3)]Roman Amoyan(アルメニア)

 《2008年》

 【アジア選手権】3位(11選手出場)
1回戦   BYE
2回戦  ○[2−0(3-0,4-0)]Rajinder Singh(インド)
準決勝 ●[0−2(1-7,TF0-5=1:12)]Soryan Reihanpour Hamid(イラン)
三決戦 ○[2−0(2-0,3B-3)]Li Shujin(黎淑金=中国)

 【五輪予選第1戦】20位(25選手出場)
1回戦 ●[0−2(1-5=1:45,1-2)]Vugar Ragimov(ウクライナ)

 《2009年》

 【ニコラ・ペトロフ国際大会】優勝(10選手出場)
1回戦  ○[2−1(0-3,2-7,3-0)]Alexandar Kostadinov(ブルガリア)
2回戦  ○[2−1(1-0,0-1,1-0)]峯村亮(神奈川大職)
準決勝 ○[2−0(2-0,1-0)]Mostafa Hassan(エジプト) 
決  勝 ○[2−0(1-0,2-0)]Venelin Venkov(ブルガリア) 

 【ハンガリー・カップ】優勝(20選手出場)
1回戦   BYE
2回戦  ○[2−0(2-0,5-0)]Maksim Kazharski (ベラルーシ)
3回戦  ○[2−0(2-0,8-0)]Anders Ronningen (ノルウェー)
準決勝 ○[2−1(0-1,2-0,1-0)]Spencer Mango (米国)
決  勝 ○[2−0(2-0,1-0)]Mariusz Los (ポーランド)

 【アジア選手権】優勝(11選手出場)
1回戦  ○[2−0(1-0,7-0)]KUDAIBERGENOV, Askhat(カザフスタン)
2回戦  ○[2−0(5-0,7-0)]HO QUANG Hai(ベトナム)
準決勝 ○[2−0(3-0,2-0)]FAGHIRI Mohammad(イラン)
決  勝 ○[2−0(1-0,1-0)]SINGH Joginder(インド)

 【ゴールデンGP決勝大会】優勝(17選手出場)
1回戦   BYE
2回戦  ○[2−0(2-0,3-2)]Rovshan Bayramov(アゼルバイジャン)
3回戦  ○[2−0(1-0,3-0)]峯村亮(日本)
準決勝 ○[2−1(0-1,1-0,1-0)]Peter Modos(ハンガリー)
決  勝 ○[2−0(2-0,1-0)]Haji pour Mohsen(イラン)


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