【特集】世界選手権へかける(11)…女子48kg級・坂本真喜子(自衛隊)【2009年9月6日】

(文=保高幸子)



 2004年アテネ五輪と2008年北京五輪の出場をかけて伊調千春(ALSOK綜合警備保障)と激闘を繰り広げてきた坂本真喜子(自衛隊=左写真)。今年は、伊調との闘いはなかったが国内予選を順当に勝ち上がり、世界選手権に出場する。

 2003年に17歳で世界選手権に初出場し、これまでに3度出場していながらチャンピオンになったことがない。2005年と昨年の3位が最高成績だ。昨年の東京・世界選手権での“金逸”は、今回の世界選手権への意気込みを強く持つきっかけとなった。「どんなに接戦になっても、最後まで勝ちを追い求めます。力を出し切り、今度こそ、世界を獲ります!」と気合を入れている。

■伊調千春が抜け、「勝たねば」のプレッシャーに襲われた

 昨年の世界選手権は、当初出場予定だった伊調が北京五輪後に休養に入り、坂本が急きょ出場することになった。自分で勝ち取った出場ではなかったこともあり、気合いが十分ではなかったというのが正直なところ。久しぶりの日本代表だったこともあり、世界一へ向かうはっきりとしたビジョンが持てていないままの出場となり、悩みや迷いがあった。

 準決勝でクラリッサ・チャン(米国)に第3ピリオド、ラストポイントの差で敗れて悔しい逆転負けを喫し、3位決定戦にまわる(右写真=チャンと闘う坂本)。落ち込んだが、前日に51kg級で6度目の優勝を決めていた姉・日登美(現全日本コーチ)の励ましで気を取り直し、2つ目の銅メダルは獲得した。

 しかし、今年5月のアジア選手権(タイ)でも北京五輪代表のリ・シアオメイ(中国)に敗れ、3位にとどまった。「中国選手の顔を見た時、あ! 北京で千春選手と闘っていた人だ、と思い、少し動揺してしまいました。外国人選手相手の対策不足もありました…」と反省する。

 伊調千春が抜けたことで「私が世界チャンピオンにならなくては」という日本代表としての自覚が高まり過ぎ、それがプレッシャーになってしまった面もあった。「練習も気持ちのコントロールもうまくいかなくて、どんどんマイナス思考になっていました」と振り返る。

 現在は、「やっとプラス思考になってきた」と明るい顔で話す。「変われたきっかけは、悩みすぎて1日を無駄にしたことに気付いたことでした。レスリングもガチガチで…。最近は周りのアドバイスをただ流し込むだけでなく、自分の意見を持つようになりました。最終的にマットに上がるのは私。私がやらなくてはいけないことだったんですよね。忘れがちでしたが、8月になって、そう強く思えるようになったんですよ」

■ゴールデンGP決勝大会で北京五輪銅メダリストを破る!

 開き直ってリラックスしたら、レスリングも余裕が出てきた。「私の悪いところは相手に合わせてレスリングをしてしまうところ。自分から仕掛けたり、得意のタックルに行けるように練習しています」

 48kg級は世界的にレベルが高いという真喜子。誰ということではなく、全員がライバルだ。だから「1回戦から苦戦するかもしれない」と語る。しかし7月のゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)で、48kg級の中で一番技術があると認める北京五輪3位のマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)を破って優勝したのは大きな前進だ。

 今回は自分で勝ち取った代表。世界チャンピオンの座を狙う気持ちは高まっている。昨秋負けたチャンは世界チャンピオンになって波に乗っている。スタドニクの技術は男子並みだ。脅威を感じていないわけではない。

 しかし姉妹の結束は盤石だ。「姉はいつも頼りにしています。自衛隊のみなさんも支えてくれている。ありがたいです。あの時(昨年の世界選手権)のミスは絶対に繰り返さない」。藤川健治コーチ(自衛隊&全日本コーチ)の指導のもと、姉・日登美コーチと一緒に対策を練り、力を合わせて世界の頂点を目指す(左写真=姉と練習する坂本)

坂本真喜子(さかもと・まきこ)=自衛隊

 1985年11月20日、青森県生まれ。23歳。八戸キッズ出身。愛知・中京女大附高卒。2000年全国女子中学生選手権優勝などを経て、姉・日登美(世界V2)を追って中京女大付高へ。

 2002年に全日本選手権48kg級で勝ち、2003年は世界選手権に出場して5位。2004アテネ五輪は伊調千春との争いに敗れて逃したが、2005年世界選手権に出場して銅メダル獲得した。その後、伊調千春の壁を破れず、北京五輪出場も逃した。

 2008年全日本女子選手権で優勝し、同年の世界女子選手権に出場し銅メダルを獲得した。2009年は全日本女子選手権で勝ったあと、アジア選手権で3位。152cm。

 ◎坂本真喜子選手の最近の国際大会成績

 《2008年》

 【ワールドカップ(団体戦)】
予選1回戦 ●[1−2(1-0=2:15,1-0,0-1=2:16)]Irini Merleni(ウクライナ)
3位決定戦 ○[2−1(1-0,4-4B,2L-2)]Tatyana Bakatyuk(カザフスタン)

 【世界選手権】3位(22選手出場)
1回戦   BYE
2回戦  ○[2−0(3-0,2-0)]Dobre Estera(ルーマニア)
3回戦  ○[フォール、1P1:28(4-0)]Singh Priyanka(インド)
準決勝 ●[2−0(1-0,0-3,1-1L)]Chun Clarissa(米国)
三決戦 ○[フォール、1P1:20(2-0)]Demet Kaya(トルコ)

 《2009年》

 【アジア選手権】3位(11選手出場)
1回戦  ○[フォール、1P(F8-0)]BAASANJARGAL Dashdavaa(モンゴル)
2回戦  ○[2−0(6-0,2-0)]NEHA Rathi(インド)
準決勝 ●[1−2(2-0,0-1,2-4)]LI Xiaomei
三決戦 ○[フォール、1P(F7-0)]LEE Yu-mi(韓国) 

 【オーストリア・オープン】優勝(16選手出場)
1回戦  ○[フォール、1P=1:12(F4-0)]Filiz Cikirikci(トルコ)
2回戦  ○[2−0(2-0,2-0)]Fani Psatha(ギリシャ)
準決勝 ○[フォール、2P=0:39(3-0,F3-0)]Christina Croitoru(ルーマニア)
決  勝 ○[2−0(4-1,1-0)]鈴木綾乃(ジャパンビバレッジ)

 【ゴールデンGP決勝大会】優勝(12選手出場)
1回戦  ○[2−0(2-0,3-0)]Annika Hofmann(ドイツ)
2回戦  ○[2−0(4-0,1-0)]Lindsay Rushton(カナダ)
準決勝 ○[2−1(1-0=2:14,1-1L,1-0)]Maria Stadnyk(アゼルバイジャン)
決  勝 ○[2−1(0-1=2:03,1-0=2:04,2-0=2:06)]Lorissa Oorzak(ロシア)


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