【特集】島原の乱2009! 進学校・島原高校の強さの秘密!【2009年8月27日】

(文・撮影=増渕由気子)



 昨年の高校五冠王者、北村公平(京都・京都八幡)が3月の風間杯全国高校選抜選手権大会を最後に74kg級から階級変更し、今年の夏は84kg級に挑戦した。“絶対王者”が抜けた74kg級で頭角を表したのは、村上貴之(長崎・島原)。奈良インターハイでは、長崎県勢としては第20回大会以来36年ぶりの優勝という快挙をやってのけ、続く全国高校グレコローマン選手権でも準優勝と健闘した。

 全国高校選抜大会は決勝まで進みながら、北村に敗れて準優勝に終わった。だが、あの北村に「(こんな内容で勝っても)うれしくない」と言わしめたほどの接戦を演じた。それを自信に飛躍しニューヒーローへ。同じ島原からはインターハイ96kg級で馬場貴大が3位に入賞し、ちょっとした島原旋風を巻き起こした(右写真=左から馬場、村上、喜多龍昭監督)

■レスリングの合宿にも勉強道具を持参

 北村が勉強もできる文武両道の優秀レスラーであることは知られているが、村上、馬場も生粋の“優等生”だ。村上が通う島原高校は、生徒の約半数が国公立大学に合格するという県内トップクラスの進学校。レスリングの合宿を張っても、常に勉強道具を持っていくほど完全な文武両道を貫いている。

 それだけに、練習時間には制約がある。朝は7時半から学校で補習があり、そのため朝練習は不可能。インターハイ直前も、村上は「夏休みの補講があって、あまり練習時間を確保できなかった」と不安があったことを吐露した。

 レスリングは全身運動で体力がものを言う競技なだけに、練習で追い込むことができない村上は不利だ。だが、島原高レスリング部の前監督で、1976年モントリオール五輪グレコローマン62kg級4位の宮原照彦氏(左写真=現長崎南高校校長、長崎県高体連会長)は「技術と基本の徹底が、短時間で結果を出す秘訣です。練習を工夫して、量ではなく質の向上が大切です」と話す。

 宮原氏のノウハウは、島原高校の伝統として現在の喜多龍昭監督にも引き継がれている。村上の先輩たちも、朝練習なしの午後練習1回のスケジュールで毎年、全国大会で結果を出してきた。

 その教えを受けて、村上のスタイルも無駄がない。そつのない試合運びでチャンスを逃さない。ピリオドを落としても、冷静に切り替えられる。「考えながらやっています」と相手に合わせず、体力に自信のある強豪選手たちを、いつの間にか自分のペースにはめる“IDレスリング”が特徴だ。

■県立の進学校とは思えないほど部活動が盛ん

 それはレスリング部に限ったことではない。奈良インターハイには、レスリング部のほかに剣道男女、弓道男子、ソフトテニス男子と計5種目で出場。県立の進学校とは思えないほど部活動が盛んなのだ。

 特に今季の剣道女子は有名。参加チームが385校と、インターハイで優勝するよりも難しいとされる7月の玉竜旗高校剣道大会では長崎県勢初の優勝を遂げるという快挙。続くインターハイも優勝し、史上2校目となる高校三冠(あとひとつは3月の魁星旗争奪全国高校剣道大会)を達成。25日には地元で盛大なパレードが行われたほどだ。

 「他の部活のヤツらの頑張りに刺激される」と村上。その剣道部らの活躍が、村上を優勝させた原動力だった。現代に起こった“島原の乱2009”−。この勢いは9月の新潟国体でも続くのか?(右写真=マットサイドの喜多監督と島原の選手)


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