【特集】昨年は涙の優勝、今年のV20は笑顔の優勝…霞ヶ浦(茨城)が学校対抗戦を制す【2009年8月5日】

(文・撮影=増渕由気子)



 涙にくれたV19の優勝とは一転し、優勝した瞬間、霞ヶ浦(茨城)のチームには笑顔がこぼれた。三笠宮賜杯全国高校総体(インターハイ)レスリング競技の学校対抗戦は、大本命の霞ヶ浦が大会2連覇、通算20度目の優勝を遂げた(右写真=胴上げを受ける大沢友博監督)

 3月の風間杯全国高校選抜選手権では、ぶっちぎりの強さで優勝をさらった霞ヶ浦。だが、6月の関東大会では、優勝したものの、大沢友博監督が「よくない状況」と言い放ったようにチーム内はバラバラだった。 砂川航祐主将が「(各選手の)個性が強くてまとめるのが大変だった」と話すように、チームをまとめるのに一苦労あったようだが、「残り2カ月、悔いだけは残さないようにしよう」という合言葉で、再びチームは結束。

 その結束力に拍車がかかったのは、大沢監督の気合だった。「20回目の優勝がかかっていて、気合が入っているようでした。やるしかないなと思ったんです」(砂川主将)。大沢監督のために、そして自分たちの最後の夏のために―。この2つの目標を掲げた霞ヶ浦はそれだけで勝ったようなものだ。

■決勝で死力を振り絞った60kg級・岩渕尚紀

 さらに、チームを一つにさせる出来事があった。60s級の岩渕尚紀の存在だ。昨年の学校対抗戦で殊勲の白星を挙げ、3年生の選手を差し置いてMVPを獲得。外見はおとなしそうだが、「一番喧嘩っぱやいのは岩渕」と、チーム随一の気の強さを持つ。だが、MVP選手に選ばれながら、個人戦は計量失格で出場できなかった。

10kg以上の減量をこなす岩渕は、団体戦で力を使い果たし、個人のタイトルを持っていない。「岩渕には個人タイトルを取らせてあげたい」(大沢監督)―。その思いで、大沢監督はある決断を下す。 岩渕を団体戦で温存することだった。

 初日の初戦(2回戦)と、2日目の初戦(3回戦)は岩渕を起用したが、準々決勝と準決勝は、控えの斎藤潤を投入。他の不動のレギュラー陣は岩渕の温存を快く受け入れた。「個人戦でも勝ってほしいし、試合の状況はアップ場にも流れるのでそれを聞いてもらいながら、減量してほしかった」。

 だが、代打の斎藤は初めての団体戦出場で緊張してしまったのか、力を出せずに2試合ともフォール負け。決勝戦の花咲徳栄戦は、84s級と120s級でこれまでの対戦成績が悪いため、軽量級4つでズバッと勝つ必要があった。

 そのため、決勝では大沢監督は再び岩渕を投入。計量にそなえて水も飲まずにいた岩渕は、こん身の力を振り絞ってストレートで勝利(左写真)。そのガッツに鼓舞されたのか、続く66s級の砂川もテクニカルフォールで4勝目をマーク。通算20度目の優勝を決めた。

■いつまで続くか、大沢王国の金字塔

  優勝を決めると、チームからは安堵のため息が。昨年は、勝てないと言われた中での劇的優勝で、大沢監督は涙を流しながら喜んだが、今回は軽量級で勝利を積み重ねるのを見て、「優勝を確信した」と話すように、笑顔での優勝となった。

  この1年間、「20回目の優勝が目標」と常に口にしていた大沢監督は、優勝インタビューで「20回目の優勝で引退しようと思ったんですが…」と衝撃的な言葉を口にしたが、すぐに「それじゃ寂しくなるので、もうちょっとやろうと思います」と、V21を狙うことを宣言した(右写真=セコンドの大沢監督)

  20回目の優勝を無事遂げたが、決勝では重量級の2選手が花咲徳栄に完敗。「最後負けちゃったから、なんかスッキリしないよね」と大沢節がさく裂。より完ぺきな優勝を遂げるために、また1からのチームづくりに意欲を見せていた。

 大沢監督が打ち立てる金字塔はいくつまで伸びるのか−。


★霞ヶ浦の栄光の記録

選抜大会 インターハイ 優  勝  校
1987年 2 位 優 勝 選抜は埼玉・埼玉栄
1988年 優 勝 優 勝   
1989年 優 勝 (不出場) インターハイは鹿児島・鹿児島商工
1990年 優 勝 優 勝   
1991年 優 勝 優 勝   
1992年 優 勝 優 勝   
1993年 優 勝 優 勝   
1994年 3 位 優 勝 選抜は北海道・岩見沢農
1995年 優 勝 優 勝   
1996年 優 勝 優 勝   
1997年 優 勝 優 勝   
1998年 優 勝 優 勝   
1999年 優 勝 優 勝   
2000年 優 勝 優 勝   
2001年 ベスト16 3 位 選抜・インターハイとも青森・八戸工大一
2002年 ベスト8 優 勝 選抜は静岡・沼津学園
2003年 優 勝 優 勝   
2004年 優 勝 優 勝     
2005年 優 勝 優 勝    
2006年 ベスト16 ベスト16 選抜・インターハイとも秋田・秋田商   
2007年 優勝 2 位 インターハイは秋田商
2008年 2位 優勝 選抜は京都八幡
2009年 優勝 優勝

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