吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)にタックル禁止令!…全日本女子・十日町合宿がスタート【2009年7月23日】



 世界選手権(9月21〜23日、デンマーク・ヘルニング)の日本代表選手を含む全日本女子チームは7月21日から新潟・十日町市の桜花レスリング場で今年度4度目(十日町では2度目)の合宿をスタート。自然の中での体力づくりを主眼におき、午前中に約2時間の体力トレーニング、午後は約3時間のマット練習と体力トレーニングで世界選手権へ向けての強化をはかる。

 22日の公開練習(右写真)には、日本協会の高田裕司専務理事が訪れた。最初は請われてタックルに入る際の首の動かし方を指導したが、熱が入り、いつしか多くのタックルのパターンの指導となり、“高田セミナー”へ。坂本真喜子(48kg級=自衛隊)、西牧未央(中京女大=63kg級)ら世界選手権の代表選手一人ひとりにつきっきりで指導し、選手の技術の向上を助けた。

 高田専務理事は、五輪を含めて世界9連覇を目指す55kg級の吉田沙保里(ALSOK綜合警備保障)に「タックル禁止令」を出した。タックルはどんな状況になっても出るので、腕を取って攻めるなど別の攻撃パターンの習得に力を入れろ、との指示。吉田も「最後に決めるのはタックルであっても、ツー・オン・ワンとか、グレコローマンのような攻撃で攻めれば、相手は動揺し、自分のパターンに持ち込める」と、この指示を全面的に受け入れた。「腕がぱんぱんになるまでやることで、実戦で使えるようになる」と、しばらくタックルを封印して取り組むことにした。

 吉田は昨年10月から国際大会を離れており、今度の世界選手権は約11か月半ぶりの国際大会になる。しかし、世界で勝ち続けた女王に気負いはない。試合後の囲み取材では、17日に大相撲名古屋場所を訪れて横綱の白鵬や朝青龍らに会い、19日に札幌で知人のプロレスラーの結婚披露宴に出席した際にIWGP王者の棚橋弘至選手(立命館大OB)に会った話からスタート。「いろんな人と出会うのに、ピンとくる(独身の)人がいない。いても、なかなか発展しない」と、最近取り組んでいる婚活が思うように進んでいない状況を披露する余裕(左写真=柔軟体操に悲鳴をあげる?吉田)

 しばらくして本題に入り、「連勝記録は途切れたけど、世界の連覇記録を続けることがモチベーション」と、現在のエネルギーを説明。「ずっと一緒にやってきた伊調姉妹、浜口選手がいなく、寂しい気持ちがする。でも気持ちを切り替え、自分が若手を引っ張っていかなければならない」とも話し、“戦友”が欠けても、世界一を目指す気持ちに落ち込みはないことを強調した。

 18日にアゼルバイジャンで行われたゴールデンGP決勝大会から帰国し、休む間なく参加した63kg級の西牧は「中国など自分の苦手とする選手が出場していない中での優勝だった。世界選手権で勝たなければ」と、今大会の優勝におごることなく前進する構え。「世界選手権で優勝すれば自信になるけど、本当の自信になるのは(伊調)馨さんに勝った時。12月の全日本選手権に出てくると思うので、そこで勝つことが目標です」と言う。

 同じく金メダルを獲得して帰国した坂本は「準決勝の壁を破れた」と、昨秋の世界選手権、今年5月のアジア選手権でともに敗れた準決勝を勝ち抜いてビッグタイトルを手にし、ひとつの壁を乗り越えたという気持ちが表れていた。しかし「(交通事故から)復帰したロシアとは、3ピリオドとも0−0。このままでは世界選手権でも確実に勝つことはできない」と気を引き締める。「ロンドン五輪はまだ先だけど、今年の世界選手権で優勝して自信をつけることが必要」と話し、今秋の勝負に全力投球だ。

 栄和人強化委員長(中京女大教)は「51kg級の甲斐友梨(アイシン・エイダブリュ)も面白いよ」と、“ポスト坂本日登美”の階級にメダル獲得の期待を寄せる一方、「72kg級の強化に力を入れないとね」と、2選手が出場しながらメダルを取れなかった最重量級の奮起をうながした。合宿は27日まで。

高田専務理事のタックル指導
坂本真喜子にスタンスをアドバイスする高田専務理事。 西牧未央に構えを指導する高田専務理事。
スパーリングの最中にも吉田沙保里にアドバイス。

《iモード=前ページへ戻る》
《前ページへ戻る》